花壇のアトリエ:蜂蜜

花壇のアトリエ」には、ハーブティーが登場します。
先生がいつも淹れてくれるお茶たちは、どこか優しく、それでいて不思議な魅力を持ち合わせています。
カモミールやラベンダーなど聞き慣れてはいますが、実際に口にしてみると意外に個性があって飲みにくいと感じることがあるかもしれません。そんなときは先生が劇中で助言してくれたように、蜂蜜を入れると飲みやすくなります。

蜂蜜とハーブティー

小説「センチメンタル」読本でも紹介していますが、蜂蜜は集めてくる花の蜜によって種類が異なります。アカシアから取れる蜜は透明の麦わら色をした馴染み深いものですが、その他レモンやオレンジ、ひまわりやローズマリーなど、不透明のものから乳白色のものまで多岐にわたります。

Apidis fleurs printanieres

私が小説「センチメンタル」読本に掲載したのは、アピディス社の「fleurs printanieres」(春の花々)です。
菜の花を中心として、果物の木々やセイヨウサンザシ、十字花科の植物などが入っています。濃厚で喉に絡み付くような従来の蜂蜜のイメージとは異なり、とても爽やかな果物を思わせる風味です。
アピディス社は1887年創業のブルゴーニュ地方の老舗で、ミツバチを車に乗せてフランスや隣国に咲く花々を求めて渡り歩いているそうです。ほぼ自然に任せて作られた蜂蜜は、無添加で身体にも優しいです。

Apidis fleurs printanieres

蜜はとろりとしていて、ベージュの美しい色が目を引きます。
蜂蜜を500グラム作るためには、ミツバチは900万回も蜜を吸わなくてはならないそうです。時間と手間を惜しまずに作られた食材は、日々積み重ねてきた人の思い出のように味わい深いものだと思います。
今は手軽にこのような食材を手に入れることができるようになりましたが、当たり前のことだと思わずに、ゆっくり感謝しながら頂きたいものです。
人間も過去から連なる生きた歴史があるからこそ、熟成され成長していくものです。
自分は大した道を歩んできていない、なんて簡単に思わずに、蜂蜜のように美しく積み重なった日々としてきちんと評価してあげたいものですね。

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