パルテノペ:小説の情景 その他編

室積へやってきた目的は、ガイドブック(小説「センチメンタル」読本)の取材撮影でした。
活字だけでは伝えられない物語の情景を、読者の方たちに伝えたかったためです。
早速現地に着いてから、小説に出てきたスポットを探したり、室積の観光名所なども巡って関連情報の取材を行っていました。
そうしているうちに、小説に出てきた情景を、もっと具体的に撮影したいと思いました。例えば前回掲載した、車窓に打ち付ける雨雫や、雲に覆われた夕刻の海などです。場所だけでなく、そこに天気や時間などが合わさると、より小説の世界観に近づけると思いました。このブログでは、ガイドブックには掲載しなかった写真をいくつか紹介しています。
パルテノペの情景、最後は「その他篇」です。

夜の坂道(山口県光市室積)
夜の坂道(山口県光市室積)
郁と陽太は、街の様子を見に行った敏志を迎えに夜の坂道を下っていきます。突っかけ下駄をからころ鳴らして歩いていくと、小さく燈もる灯りの下で敏志の姿を見つけました。敏志は以前のように明るくふざけていましたが、郁はまだ彼に後ろめたさを感じていました。

真夏の午後の夢
真夏の午後の夢
花火大会を前に、郁は敏志のおじさんの家で眠ってしまいます。夕方になり風が出てくると、彼女は風鈴の音で目を覚まします。寝ぼけて顔を上げたままでいると、敏志が呆れながら麦茶を渡してくれました。

水の安らぎ
水の安らぎ
郁は東京に戻ってからの約十年、ずっと芦室の海を忘れられずに過ごしてきました。そしてプールに入っては、水に身を委ねているばかりでした。夢の中でも水の風景に包まれて、どこからかやってくる何かに触れようと手を伸ばしてみますが、いつも掴めないまま眠りから醒めてしまいます。

Scroll to top