洞窟の坂:天空の街、小日向

小説「洞窟の坂」のモチーフとなった街、小日向を引き続きご紹介します。
小日向は東京都文京区にある高台の街です。

東京都文京区小日向

文京区には多くの丘陵地が存在します。
小日向は目白から目白台、大塚から小石川辺りの丘陵地に繋がるようなかたちで高台の地形が連なっており、小日向台と呼ばれています。

東京都文京区小日向

小日向には石川啄木や安部公房などの旧居があったといわれています。またキリシタン屋敷などもあったそうで、この地は歴史や小説などにもよく登場しています。私は以前、茗荷谷に住んでたので、この地には何度となく足を運びました。

東京都文京区小日向

東京メトロ有楽町線「江戸川橋」から音羽通りを進み、小日向に歩いていくとすぐに坂に辿り着きます。
上っても坂が連なって、なかなか頂上が見えてきません。

東京都文京区小日向

ようやく坂の上に辿り着いても、平坦な台地が広がるだけで普通の住宅街のように見えます。
しかし少し歩くとまた下り坂に出くわすので、取り囲まれているような奇妙な感覚に襲われます。
私が小説内で「天空の城」や「天空の街」と称したのは、この印象に基づくものです。

東京都文京区小日向

上の写真は崖ぎりぎりの場所から望む東京の風景です。
近くにはTOPPANのビルや文京シビックセンター、遠くに東京スカイツリーなどが見えます。方向を変えると防衛庁の鉄塔や東京タワーも確認できます。

東京都文京区小日向

小説「洞窟の坂」の主人公はこの街で生まれ育ち、この場所を「天空の城」と捉え、自分の家を「砦」と表現していました。世間に少しだけ怯えていた彼女にとって、この街は自分を優しく守ってくれる存在だったのでしょう。確かに坂下の通りは交通量も多く賑やかですが、小日向の住宅街はのんびりと静かです。

小日向は歴史も古く、神社やお寺も存在しています。崖の一番見晴らしが良いところには数多くのお墓が立ち並び、とても居心地が良さそうです。次回はそんなお墓の風景をご紹介したいと思います。

月刊群雛2014年3月号 ※「洞窟の坂」掲載
BCCKS(オンデマンド印刷版・電子版)Amazon Kindleストア、iBooks Store、楽天Koboで発売中。

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