今年は大雪が降るなど冬の底力を思い知らされましたが、ようやく春めいてきました。
私の住む大連でも寒さはやんで、心地よい風が身体を包み込んでいます。
暖かな太陽の日射し、そこらじゅうで香る春の花々。
のんびりと散歩をするか、それとも昼寝をするか。
きっと世界中の生き物が春の訪れを喜び、ウキウキしていることでしょう。
好きな季節を聞かれるとき、私は夏と答えます。
四季はそれぞれ大好きなのですが、夏に感じる生命の躍動感と、そこはかとない寂しげな雰囲気が好きだからです。でも今なら、やっぱり春と答えるかもしれません。
春の魅力といえば、やはり美しい花たちです。
冬の間、どこにこんなに鮮やかな色を蓄えていたのかと不思議になるくらいの美しさですよね。
そして日本人といえば、桜です。
桜には、皆さんそれぞれに格別の思い入れがあるのではないでしょうか。
ソメイヨシノに代表される桜の花は、ほのかに赤味を帯びた慎ましい色彩をしています。
また花びらもこじんまりとしていて、節度を重んじる日本人の気質に合っていると思います。しかしそれらが一斉に空を覆い尽くす様を見ると、なんともいえない気持ちになります。心に秘めた気持ちを解放させたような、胸が張り裂けるような激しい感動があります。
そして桜にはもうひとつ、大きな魅力があります。
皆さんも頷かれると思いますが、それは散り際の美しさです。
私は満開を過ぎた後、散った花びらが地面を覆い尽くす様を見るのが好きです。
特に雨に濡れた石畳に積もる桜がお気に入りです。
桜は潔く散った後に、もう一度地面に満開の花を咲かせます。役目を終えて、後は永遠の終わりを待つばかりなのに、桜は依然として美しく咲き誇っています。私はその儚い様を見ると、いつも心に込み上げてくるものがあります。
現在は公開していませんが、私の処女作ではこの地面に咲く桜について書いています。
過去と決別するとき、それが苦く辛いものであったとしても、名残惜しいものです。
同時に、これから訪れる未来への期待と不安が緩やかに心を覆っていきます。
桜はそんな気持ちを優しく包み込んで、何も言わずに後押ししてくれているような気がします。
私は中国での生活が長いので、しばらく日本の春を満喫できていませんが、実はもうすぐ日本に戻って生活することになっています。このことについては、次回以降にお伝えできればと思います。