センチメンタル:坂下通り

今回は小説「センチメンタル」に登場した、たばこ屋のある文京区の坂下通りを紹介します。

東京都文京区坂下通り

坂下通りは豊島区と文京区の間、護国寺・豊島岡御墓所の東側に位置します。春日通りと平行に、切り立った崖と崖の間を縫うように道が作られています。護国寺側の不忍通りから道が始まり、サンシャインシティのふもとまで続いています。都電荒川線も走っており、情緒ある通りです。

東京都文京区坂下通り

通り沿いには古くから残る洋菓子店や銭湯、お肉屋さんなどがありますが、最近は新しい建物に変わりつつあります。東京のど真ん中でもありますし、時代の波には逆らえない運命です。
そして小説に登場するたばこ屋の看板も、何年か前に新しいものに変わってしまいました。

東京都文京区坂下通り

当時の写真を撮っておけばご紹介できたのですが、色々探したあげくに見つからなかったのでGoogle Mapのストリートビューからご紹介します。
左が現在の看板、右側が小説に登場した看板です。

さらに大きな写真をネットで探すと、こちらにありました。みちくさ学会さんのブログに掲載されているものです。

私はそのたばこ屋の看板が大好きだったので、いつもそれを眺めては「綺麗だな」と思っていた。その看板はたばこ屋の二階に掛けられていて、大きく「CABIN」と書かれていた。よく見ると小さくてひらひらの金属片が、魚の鱗(うろこ)のようにびっしり敷き詰められている。それが風に吹かれて各々に、ゆらゆら揺れるのだ。そして商店街の灯りに照らされて、赤と黄色の鈍い光を放っていた。いつもぽかんとそれを眺めていたので、お婆ちゃんがにこにこと笑って私を見つめていた。

塩澤源太「センチメンタル」より引用

東京都文京区坂下通り

変わっていくものがあれば、変わらずに残り続けているものもあります。
上の写真は吹上稲荷と呼ばれる神社で、1622年(元和八年)からある由緒正しい神社です。しかしながらこの神社も様々な場所を渡って、明治時代に現在の場所に移されました。因みに私が住んでいたマンションの場所には、この神社があったようです。なんだかとても深い縁を感じます。

さてこの吹上稲荷には、日本で最古の狐の神使がいらっしゃいます。
宝暦一二年二月、つまり1762年に作られた狐です。

東京都文京区坂下通り

とても愛嬌のある、可愛い表情をしています。
古いものがよいとは限りませんが、こうして昔のものを見ていると、なんだか心が和みます。

東京都文京区坂下通り

小説の主人公である結希や啓介も、この坂下通りを歩きながら小さな発見に驚き、笑ったり話し込んだりしていたのでしょう。
実際にのんびり散歩していると、彼女たちの会話が聞こえてくるような気がします。

【文京区大塚坂下通り】
東京メトロ有楽町線・護国寺駅より徒歩5分。都電荒川線・向原駅より徒歩5分。

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