一歩ずつ踏みしめて

大連から東京に戻ってきました。
出張ではちょくちょく帰ってきていましたが、本格的な帰国となると新鮮な気分です。
足もとをしっかりして、着実に一歩ずつ踏みしめて進んでいきたいと思います。
今回はそんな足にちなんで、靴についてコラムを展開していこうと思います。

RED WING エンジニアブーツ

洋服、腕時計、アクセサリー。身につけるものは多々あれど、靴は男女問わず人気が高いと思います。
私も例に漏れず、マニアというほどではないにせよ、昔から大好きでした。
とりわけブーツは、スニーカーに並んで大好きな靴のひとつです。

RED WING エンジニアブーツ

ブーツが活躍するのは特に冬場です。
足もとが冷え始める秋口に、久しぶりに足を通すとなんだか懐かしい気持ちになります。
冬の夜の帰り道、静かに響くかかとの音、少しだけ感じる足先の冷たさ。
ブーツの感覚が、冬の思い出を一瞬で呼び覚まします。

しかし私は一年中ブーツを履いています。
とりわけエンジニアブーツが好きで、何代か履き続けています。
上の写真は昨年くらいに購入したもので、まだ完全に足に馴染んでいません。
以前と同じサイズを購入したのですが、モデルチェンジで革の質やフォルムが変わったことと、足に怪我をしたこともあり、試着したにもかかわらず左足がきつくて非常に難儀していました。
オイルを塗ったりペンチで伸ばしたりしつつ、根気よく履き続けて大分楽になりました。

RED WING エンジニアブーツとBean Boots

エンジニアブーツは足先に金属が入っており、足もとをしっかり守ってくれるところが気に入っています。
しかし弱点は、その足先を覆う革が傷つきやすいところです。
このブーツも擦れたり削れた痕がありますが、私はむしろ、そういうところが大好きです。
人間も、弱点が魅力に映ることがあります。自分にしか見せない弱さを垣間見ると、途端に相手を好きになってしまうことがあります。さらに自分のために、身を挺して守ってくれるのです。
私だったら、とても愛しく感じ、大事にしたいと思います。
少しずつできる傷は共に歩んできたしるしのように感じ、愛着がわくのです。

Bean Boots

上の写真はL.L.BeanのBean Boots。
冬に購入し、知り合いに大連まで運んできてもらいました。

大連は中国北部に位置し緯度は仙台に近いです。海洋性気候のため雪は降らないほうですが、東京や上海に比べれば、そこそこの積雪量です。特にこの冬は雪の日が多かったです。
道路がぬかるんだり、積もった雪で滑りやすくなることもあるため、購入に踏み切りました。

Bean Boots

独特のフォルムは見ていて飽きません。
私が中高生の頃に個人輸入が流行りましたが、当時アメリカのカタログを見て素敵だなと思っていました。いちばんの特徴のラバー製ソールは、アスファルトを歩くとかなり減ってしまいます。交換にもかなり手間がかかりますし、中国にいたこともあって久しぶりに新調しました。

こういった機能性の高いものは、フォルムにその魅力がにじみ出ています。
私はこういった内面が投影された美しさを持つものが大好きです。
人も容姿がよいに越したことはありませんが、こういった地に足着いた美しさが出てくるといいですね。

Shoe care: Mustang Paste, Boots Oil, Saphir

さて、これら靴たちには、気持ちだけでなく行動で愛情を示さなくてはなりません。
靴の特性に合わせてケア用品を使い分けるのですが、上記のブーツたちはミンクオイルでケアします。
ミンクオイルはきらびやかな光沢は出ませんが、革の質をよくし、長年使えるものにしてくれます。

部分的に光沢を加えたかったり、色を少し変化させたい場合、ワックス入りのクリームを取り入れるのもいいと思います。Bean Bootsは焦げ茶色なので、茶色のクリームを上から少し重ねています。
これらのケアは基本的なことを踏まえれば、自分なりの試行錯誤で方法を編み出すといいと思います。
私はミンクオイルを指で塗りこむのですが、靴を間近にしていると状態が如実に分かります。
じっくり腰を据えて向き合い、相手を知っていくような感覚です。

RED WING エンジニアブーツ

ヒールには金属製のパーツを打ち込んで補強しています。
靴はどうしてもこの部分が擦れてなくなってしまうので、日頃から小さな手間をかけてあげます。
こうして小さな気遣いを行なうことで、その靴と長く付き合うことができます。
これも、人間関係と同じですね。

KEEN Jasper Silver Mink

とはいえ、ケアもせずにぼろぼろになるまで使いたおす靴もあります。
上の写真のスニーカーは三年ほど使っていますが、なにもしていないのでソールには穴があき、表面も薄汚れています。雨の日なんかは靴の中に浸水してくることもあります。先ほどのブーツたちとは、まるで違う付き合い方です。

でも私は、こういう関係も好きです。
どんなに汚れてもとことん使う。どこに行くにも一緒で、どんなことがあっても最後まで履く。本当に使えなくなったら、潔く捨てる。
いわば自分の一部といったところでしょうか。私は先ほどのブーツたちを大切な仲間と見ていますが、このスニーカーには自分自身を投影しているように思います。

靴は自分の性格や趣向が表れます。これが、多くの人が靴の虜になる理由のひとつだと思います。
私は今日も明日も、そんな靴を履いて進んでいきます。
東京という新しい舞台で、一歩ずつ地面を踏みしめて、着実に進んでいきたいと思います。

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