課題となる相手

一般的に人間は、他者を求めます。他者に認めてもらいたい、他者になにかをしてあげたい、そう思うのが自然だと思います。その他者にはさまざまな人がいると思いますが、なかでも自分の成長に不可欠な「課題となる相手」というのが存在するようです。

東京都千代田区有楽町:日生劇場

人は自身の性分に合った相手を選ぶことができますが、必ずしもそのかぎりではありません。
親と子に代表される親族関係、嫁姑のような縁故、仕事や学校などでの社会的関係。
これらは、自分の望まない相手でも関わらなくてはならないものです。逆に自分で望んだ相手だとしても、すべて都合良く受け入れてもらえない場合もあります。
人は多かれ少なかれ他者との関係に苦慮し、乗り越えていかなくてはならないのです。

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私の知人で、人の生きる道を助言している方がいます。
彼女は先ほど述べたように、誰しも必ず乗り越えなくてはならない「課題となる相手」がいるのだと教えてくれました。

例えば彼女のお母様でいうと、お姑さんがまさにそうでした。
お母様は旦那さん(知人のお父様)の家に嫁いでから、そのお姑さんに猛烈にいじめられたそうです。それでもお母様は何十年もずっと耐え続けたそうです。
その後、お姑さんは亡くなりましたが、旦那さんも亡くなって寂しい日々が続きました。しかしそれを乗り越えると、まるで仏様のように優しく健やかな性格になったそうです。
以前はお姑さんのことを悪く言うようなこともありましたが、許すことができるようになったのでしょう。お母様はお姑さんを思い返し、嫁をいじめなければいられなかった境遇に心から同情しているそうです。つまり、その出会いが彼女の心の成長をうながしたのです。

その知人は、私の「課題となる相手」も教えてくれました。それは相手というよりは、関係です。私にとっては「恋人との関係」が自身の成長をうながすのだと教えてくれました。

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確かに思い返すと、合点がいきます。
私は姉が二人いて女性との関係には慣れていますが、恋人となるとついつい甘えてしまいます。甘えるというとデレデレしたところを思い浮かべるかもしれませんが、そういう類いのものではありません。むしろ好きだという感情が読み取りにくい甘えです。

私は思うに、自身に対して大きな見栄があるようです。また、風変わりな考えをする傾向にあります。ですから相手に面白い考えを聞いてもらって、褒めてもらいたいところがあるように思います。
しかしそもそもが風変わりなので、相手にとっては聞くだけでも面倒くさいと思います。
友人や仕事などでは距離の詰め方がいくらでも考えられるので調整できますし、家族は何十年も一緒にいるのでどう思われようがあまり気にしません。しかし恋人のようにいちばん身近な関係だと、受け入れてもらいたくなるようです。

このような考え方は自分本位であり、相手の許容量もあります。ですから少しでも改善できれば、人を思いやることができるようになるのだと思います。
しかし課題であるがゆえに、簡単には解決することはできません。また、今までもそれなりにうまくやってきているところもあり、また逃げてしまうかもしれません。
ですから今は思い詰めずに、ゆっくりやろうと思っています。こういう自身の心の動きを慎重に観察して、小説に書き起こし、ふたたび客観的に見つめ直そうとも思っています。

もし私の小説の登場人物がこのような悩みに直面していたら、きっと作者も思い悩んで執筆したのだなと感じていただけたら幸いです。読者の方に苦笑いしていただけたら、きっと励みになると思います。

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