お気に入りの喫茶店

喫茶店が嫌いだという人はあまりいないと思いますが、人によって好きなお店、嫌いなお店は分かれると思います。束の間の安らぎの場所を求めているのですから、自分にぴったりあった場所で過ごしたいものですよね。

東京都豊島区南池袋:珈琲専門館 伯爵 池袋東口店

喫茶店という耳触りは、どこか懐かしいような、野暮ったいような感じがします。今の人たちだと、カフェというのがしっくりくるでしょうか。
若い頃は私もお洒落なカフェに行くのが好きでしたが、年齢を重ねていくうちに落ち着かなくなってきました。今ではもっぱら喫茶店と呼ぶにふさわしい、少し野暮ったいお店に通っています。

東京都豊島区南池袋:珈琲専門館 伯爵 池袋東口店

私がいちばん利用しているのが、池袋にある「珈琲 伯爵」というお店です。
少し照明を落としていながらも、過剰に装飾された空間は昭和の匂いを感じます。淹れてくれる珈琲は、シアトル系カフェとは少々異なっており、昔ながらのまろやかな味わいです。店員の方は客に立ち入らず、寡黙に支給してくれます。

東京都豊島区南池袋:珈琲専門館 伯爵 池袋東口店

一見すると入りづらいお店なのですが、常連が多く広い客層に愛されています。池袋という土地柄なのか事情がありそうなお客さんも多いのですが、一般の若年層も利用しています。私は二十年以上通っていますが、店のレイアウトも装飾もずっと変わっていません(ゲームのテーブルはなくなってしまいましたが)。しかし、この変わらない感じが落ち着くのです。

東京都大田区羽田:コーヒーオリオール

また、個人経営の喫茶店も大好きです。見知らぬ土地を散歩しているときにふっと入って、店内の雰囲気を楽しみます。その土地で長い歴史を経て、適度にくたびれた感じを見るのが楽しいのです。しかし、長いといってもひとりの経営者の人生程度の歴史です。老舗の旅館や料亭などと比べれば、歴史的価値はないのかもしれません。それでもそこには沢山のお客さんとの関わりや、経営の浮き沈み、街の移り変わり、経営者本人の人生などが刻まれています。まるでその土地一帯のアルバムを見ているような気持ちになり、物語を感じるのです。

東京都大田区羽田:コーヒーオリオール

また、一見(いちげん)の客と、常連客との距離感がなんともいえず滑稽で、いきなり人の家に飛び込んで生活を垣間見ている気持ちになります。私は人々の普通の人生を小説にしたいと思っているので、そのような喫茶店にいると沢山アイデアが浮かんできます。

東京都大田区羽田:コーヒーオリオール

その他で好きな喫茶店といえば、ルノアールのような昔から日本にあるお店です。しかし懐古主義というわけではなく、自分の空間を確保でき、店員にも他のお客さんにも邪魔されない適度な孤立感が保たれているお店が私にはしっくりくるのです。

東京都大田区羽田:コーヒーオリオール

私が喫茶店に求めるものは人とは異なるものですが、きっとその嗜好は子どもの頃に培われたのだと思います。あたたかくのんびりできて、大人の隠れ家のような場所が理想です。皆さんはまた違ったものを喫茶店に求めると思いますが、きっとそれはすべて正解であり、各々の至福のときが過ごせれば最高なのではと思います。

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