柔軟性とこだわり

仕事を行なう上でいつも悩ましく思うのが、特定の分野にこだわる気持ちと、制約がある中で発揮するべき柔軟性との折り合いです。

バン

私はアートディレクターでありながら、プロジェクトを統括するプロデューサーでもあります。また最近は、ウェブや印刷、動画など様々な媒体を取り扱っています。

私は美術大学でデザインや美術を学んだ経験から言っても、キャリアをスタートしたデザイナーという立場からしても、やはりクリエイティブのクオリティに重きを置いた人間でありたいと思います。しかしながら、同時にクライアントと密接に接し、ビジネスとして彼らの要求に応えるプロデューサー的な立場も経験しています。さらに、自社の事情を考えなくてはならない管理職の立場でもあります。

両者の立場をスペシャリストとゼネラリストと言い表すことがありますが、これらは対極のアプローチを持つ、性質の異なるものです。価値観も異なるので、時折対立することもあります。

最終的にはクライアントのためであり、何よりユーザのために仕事をしています。一般的にスペシャリストはユーザのためになるような仕事をしようとこだわり抜き、ゼネラリストはユーザだけでなくクライアントのためになるようにバランスを取ろうとします。管理職であれば、さらに自社の利益も含めようとします。プロジェクトを完遂しようとしているのに、それぞれ重きを置いているところが異なるため、噛み合わないこともしばしばです。

そしてその対立によって感情的になり、本来の目的を忘れて相手を憎み、自身のプライドを守ろうと大義名分を掲げてしまうことがあります。そうなると正論を主張しつつも、本心は極めて幼稚なものにこだわってしまう、見るも無惨な状態に陥ります。

こういった悲しい現場は見るに耐えないのですが、さして珍しいものではありません。私自身も感情にとらわれることは多々あるので、口当たりの良い論理を語って自身の保身に対して躍起になることがあります。そのようなときは一度冷静になり、自身を顧みる時間を持つべきだと思います。

柔軟性とこだわり、実際には両者は同じ目的を有しています。このことを客観的に理解し、一緒にプロジェクトを遂行する人々の気持ちになって考え、どのようにコミュニケーションをするか熟考する必要があるように思います。

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