皆さんは「Binky」という単語をご存知でしょうか。ネットで調べると「お気に入りのもの」という意味が出てきます。「持っていると安心するもの、落ち着くもの」を指し、Blankie（毛布）の幼児的発音からきているそうです。
そんな「Binky」という名前を持つ黒猫が、ブルックリンの宿泊先に住んでいました。彼は宿泊先のホストのおじいさんのお気に入りで、彼専用の部屋をあてがわれるほど愛されていました。
Binky、通称ビンさんは、とても人懐っこくツンデレで、彼の魅力に私もやられてしまいました。宿泊中は常に彼とじゃれあって遊んでいました。
宿泊先はBrooklyn Heightsという場所にあり、１９世紀に建てられた伝統的な建物でした。緩やかに湾曲した階段があり、三階建の各階にはリビングと書斎と寝室、キッチンや浴室が揃っています。
屋上にも上がることができ、ブルックリンと対岸のマンハッタンを一望できる素敵なロケーションです。ホストのおじいさんは一人で住んでいるらしく、二階を宿泊用に、三階をビンさん用に使っています。
ビンさんはとにかくやんちゃで、最初は気持ちよさそうに撫でられているのですが、だんだん興奮してきてじゃれてきます。そして、私が壁やドアの向こうに隠れると、黄色い目をまん丸にさせて興味深げに覗いてきます。彼はこの隠れん坊が大好きで、何度隠れても飽きずに飛びかかってきます。
廊下に寝ながらごろごろと転がっているうちに、階段を寝っ転がったまま降りていったりと、見ていて本当に飽きません。
時には浴室のカーテンに隠れたり、ベッドに乗っかったりと、宿泊している私の部屋を自分のもののように振る舞います。そのくせ、相手をせずにいると私を探しにくるので可愛くてしょうがありません。
屋上は彼の一番のお気に入りのようですが、放すと手の届かないところに逃げてしまいます。なかなか捕まらないので、おじいさんにはあまり屋上に出してもらえないようです。私も彼を屋上にあげてみたのですが、しばらく戻ってこないので、次からはガラス戸を閉めていました。すると、「一人だけ外に出てずるい」とガラス越しに恨めしい目でずっと覗いているのです。
名前の通り、本当に私のお気に入りになってしまったビンさん。別れ際はとても切ない気持ちになりましたが、彼はきっと何食わぬ顔して新しい宿泊者と遊んでいることでしょう。私はもちろんそれでも構わないのですが、彼に再会するためだけでも、ぜひまたニューヨークに訪れたいと思いました。
魅力的な猫はたくさんいますが、なかなか出会えないチャーミングな猫、それがBinkyです。いつまでも元気でいてほしいものです。
