二十四節気と七十二候

一月もあと少し。旧暦で見ると立春まで一週ほどなので、今年もあとわずかです。最近は記録的な寒さが続いているので、皆様どうぞご自愛ください。

東京都文京区小石川 小石川植物園:猫

旧暦の二十四節気と七十二候(合わせると気候の語源になります)によれば、新暦の一月三十日から二月三日は、第七十二候「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」、つまり最後の候です。一年の終わり、大晦日のような締めくくりとなります。この時期は厳しい冬からだんだんと春に向かい、木々や植物が少しずつ芽吹く準備をしていることがわかります。

昨年から今年にかけて、暖冬と記録的な寒さが到来してリズムが崩れているものの、自然は一年を通して変わらず順繰り回っています。飴のような柔らかい色の蝋梅、火のような鮮やかな色のジョウビタキなどは、この季節しか見られらないものです。

東京都文京区小石川 小石川植物園:梅

梅やノゲシは春の到来を探るように顔を見せはじめています。その姿を見ていると、あと少しでカラスノエンドウやヒナゲシも元気に花を咲かせるのだとワクワクしてきます。

夏の花であるムクゲやアジサイは枯れたままじっと寒さを凌いでいたり、少し前までたくさんぶら下がっていた木の実たちがヒヨドリやメジロに食べ尽くされていたりと、すべてはずっと変わらないサイクルでまわっています。ツバメももうすぐ、帰ってくることでしょう。

過去の人々は自然に対抗する術がなく、このサイクルに従うほかありませんでした。自然は脅威であり、移り変わりをよく知っていないと死に至る危険を伴っていたのだと思います。同時に、季節の自然と自身を重ね合わせ、愛することもできたのだと思います。

翻って、現代の私たちはどうでしょう。科学や経済の恩恵を受けて、自然の脅威やサイクルから解き放たれ、自由に身動きできるようになりました。しかしながら、それが逆に足かせとなり、リズムが狂ってしまったようにも感じます。例えば日の出、日の入り関係なく寝起きし、季節に関係のない食事をします。自身の価値観のみで生活するようになり、基準は仕事のことなど単一的なものばかりとなってしまいます。

そのような生活を好む人も多いと思いますが、本来、人間も自然の影響を受ける生き物です。月の引力と女性の関係は言わずもがな、季節ごとの自然災害、温度や湿度の上下など、いまだに人間は自然のサイクルから逃れられないのです。身体が一番それを知っていますし、さらに心だって自然に影響されています。私は二十四節気と七十二候のように、もう少し細やかに自然の移り変わりに着目し、観察し続けていたいと思います。三六五日というはちょうどいいくらいの長さで、一年経って同じものにめぐり合えると、なんとも懐かしい気持ちにさせてくれます。

東京都文京区小石川 小石川植物園:猫

今年は一年を通して、本当に自然の移り変わりを観察できたと思っています。様々な発見があり、喜びがあり、とても充足する毎日でした。本当は仕事をしている間ものんびりと観察していたいのですが、それはもう少しあとにとっておきたいと思います。

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