日和下駄の休日

明日は春分の日。本格的な春がやってきました。土日を含めて三連休となりますが、最近の私は休日が待ち遠しくてたまりません。

梅

休日は朝起きると、どこへ出向こうかとワクワクしてきます。しかしながら、目新しい場所よりは、行き慣れた界隈をぶらぶらすることが多いです。以前は美術館に行ったり、映画を鑑賞するなど目的を持った外出をすることもあったのですが、最近は着の身着のまま路上を歩き回ることが多いです。この心境の変化は何なのか、自分でも全くわかりませんが、老人的な嗜好になっていることは確かです。永井荷風の日和下駄ではありませんが、元々用意された発見に赴くより、小さくても思いがけない発見に出会うほうが魅力的なのかもしれません。

もしくは、興味がより個人的なことに向いているのかもしれません。大勢の人の興味がある「誰かの何か」を見に行くよりは、私やほんの一握りの人しか興味を持たない「自分だけの何か」を発見するほうが魅力を感じるのかもしれません。

メジロ

探鳥などは、正にその典型かもしれません。自分と野鳥が偶然出会い(もちろん出没する場所へ赴きますが)、その時にしか遭遇できない場面があります。例えば、メジロが梅の木に集まるのは当たり前の習性ですが、愛くるしい仕草は時々によって異なるものです。野良猫と出会う時も、いつも同じ展開にはなりません。その時、その場所によってそれぞれ異なるのです。非常に地味な楽しみではありますが、その些細な瞬間に立ち会うのが今の私にとっては何より嬉しいのです。さらにそこで親しい人と感動を分かち合えたら、喜びは倍増します。

とはいえ、美術館や映画など、目的を持った外出というのも捨て難いものです。自分の見地を広げますし、感想を一緒に行った人と語り合うのはとても有意義なことです。ただ、天気が良いと屋内にいるのはもったいなくて、ついつい外をぶらぶらしたくなるのです。

長い冬を越えて、啓蟄(けいちつ)、そして春分を迎え、自然が美しく芽吹き始めています。貴重な休日を使って、この瞬間にしか味わえない喜びを、日和下駄を曳きずりながら噛みしめたいと思います。

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