点と面

人は地球の上であれば、どこまでも遠く行くことができます。そして四方に広がる広大な土地に、好きなように行くことができます。

飛行機から見た風景

しかしながらなぜ、ある決まった場所に戻ってくるのでしょうか。私はいつも海外に出張や旅行に行くと不思議に感じることがあります。

飛行機に乗っていると、普段の生活では見たこともない世界が広がります。地上ではまったく手の届かなかった雲を優に超え、それらを見下ろします。地上で激しい雷雨に見舞われていたとしても、空に上がればまったくの晴天です。彼方は地平線が丸く見え、気がつけば海や大陸を簡単に渡ってしまいます。人間は、どこまでも遠く行けるのだなと感じる瞬間です。

また、大学生だった頃にアメリカをバスで横断したことがあるのですが、おおよそ5000キロ四方に自分を知る人が誰もいない環境に身を置いていることを実感し、妙な開放感に包まれた経験があります。そこからどこに行くのも自由だし、何をするにも自由な環境で、住んでいた場所に戻ることが無意味に思えました。

飛行機やバスなどの移動手段がなかったとしても、徒歩でも恐らく日本国内で感じ得る感覚だと思います。こんなに人間は自由であるのですが、必ず決められた場所に戻ることが不思議でたまらなく感じます。

さらに、海外に長期滞在を
している場合、決められた場所がひとつからふたつに増えます。私の場合は東京と上海、もしくは大連を行き来していました。海や国を越える大胆な移動手段の割に、ピンポイントに小さな目的地が存在するのはなんだか滑稽に思えました。

これはひとえに生活する場所があるからなのですが、人間は2メートル未満の小さな存在であるがゆえに、面ではなく点でしか生きることができない存在なのだからと思います。そう思うと人間はとてもちっぽけなものだと感じますし、だからこそ、その狭い場所やそこにあるものが大切なのだと思えます。

Dalian, Liaoning, China

自分を支えてくれている人たち、成長を見守り続けてくれた自然など、改めて感謝したいと思います。それと同時に、様々な場所に赴いて自分の大切な場所が増えていくのも嬉しいものであります。渡り鳥たちは、きっとこのような感覚を本能として持ち合わせているのでしょうね。

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