背高泡立草と七十二候

二十四節気では霜降(そうこう)になりました。朝晩の冷え込みが増して、山里では霜が見られるようになる季節です。コートやブーツが活躍し始めますね。

東京都北区岩淵町 荒川岩淵関緑地:セイタカアワダチソウ

さて、二十四節気の七十二候には、季節にまつわる様々な動植物や自然現象が登場します。ツバメやモミジ、ツバキやハスなど四季折々に、そして出歩いてみると確かにその時期に存在するものばかりです。昔の人々と現在を生きる私たちの感じていることが一緒なんだと思うと、少し嬉しい気持ちになります。

しかしながら、開発が進んだり、外来種が入って生態系が変化することによって、現代の私たちにしか見ることのできないものが増えてきています。例えば、ヒヨドリはもともと秋にやってきて春に去っていく冬鳥でした。それが1970年代頃から留鳥として一年を通して見られるようになりました。また、春はヒナゲシの仲間のナガミヒナゲシが道端にたくさん咲いていますが、彼らは60年代頃に日本に入ってきた帰化植物です。

東京都北区岩淵町 荒川岩淵関緑地:セイタカアワダチソウ

今の季節でいうと、セイタカアワダチソウ(背高泡立草)が代表格です。これは明治時代の末期に園芸用として持ち込まれたそうですが、大戦後にアメリカの輸入物資に付いていたものが本格侵入の原因なのではないかと言われています。
非常に強い繁殖力を持ち、川沿いの土手などにたくさん生えているのが確認できます。在来種の生態系を脅かすため、外来生物法の要注意外来生物に指定されているそうです。

東京都北区岩渕 岩渕水門周辺:セイタカアワダチソウとススキ

土手を歩いていると、セイタカアワダチソウの侵攻に真っ向から対立しているススキの姿を目にすることができます。遠目から見るとよく分かるのですが、セイタカアワダチソウの黄色い絨毯のすぐ隣に、淡いベージュの色をしたススキの軍勢がぴったりと張り付いています。ところどころで黄色とベージュが入り混じっているところがあり、さながら戦国時代の合戦を見ているようです。

ちなみにススキは日本の在来種なので「正義」のイメージがありますが、セイタカアワダチソウの故郷である北アメリカでは、ススキは逆に外来種であり悪として見られているそうです。

東京都北区・足立区 荒川河川敷:セイタカアワダチソウ

セイタカアワダチソウとススキの合戦は、現代の私たちにとって季節を感じるものであると言えます。もし七十二候を改めるとしたら、その中のひとつとして紹介されるかもしれませんね。

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