以前、このコラムでもお伝えしましたが、春の雰囲気を味わいに荒川土手まで行きました。そこで案内板の「荒川之下流三十景」を目にしたことがきっかけで、最下流の新砂から荒川を上っていくアイデアを思いつきました。
「荒川之下流三十景」の案内板は、荒川の距離1キロごとに両岸に交互に立てられてあり、各地域の名所をイラストで紹介しています。こちらの詳しい説明は、案内板の全てを巡ったあとで改めてしようと思います。今回はその散歩で訪れた砂町銀座商店街について触れようと思います。
砂町銀座商店街は、都営新宿線「西大島駅」か東京メトロ東西線「南砂町」が最寄りの駅となりますが、少々離れていることからバスで行ったほうが良いかもしれません。荒川からは徒歩約15分ほどの距離にあります。人が何人か通れるほどの路地に所狭しと商店が並び、地味ながらも活気のある商店街です。
とりわけ、お惣菜が充実しており、歩いているだけでお腹が空いてきます。肉屋のコロッケやメンチカツ、煮物や漬物などあらゆる種類のお惣菜が並びますが、中でも有名なのが「あさり屋さん」という貝のお店です。
こちらのあさりの炊き込みご飯は限定品となっていて、地元でも人気の高い商品だそうです。お店のおかみさんがお櫃(ひつ)からパックに入れ替えてくれ、さらにその上にあさりを乗せてくれます。生姜がほんのりと効いた粋な味わいで、人気商品というのも頷けます。
砂町銀座には何軒かおでん屋もあり、こちらの具材は海の雰囲気をとても感じさせるものです。練り物には桜エビが混ぜてあるものや、あさりが混ぜてあるもの、またスジと言われるサメのすじや軟骨で作られた練り物などが売っています。
ゴボウ巻きなどの細長いものは、包んでいる練り物が薄く、私がよく食べていた北区の厚いものとは異なり面白いなと思いました。
さらに砂町銀座は焼き鳥屋が多い印象です。荒川側に位置する砂町銀座の端にある焼き鳥屋は客が列を作っていますが、確かに味は絶品で、働いている方々も素敵な笑顔のお店です。
レバーは格安で食べることができますが、肉厚もあり満足感があります。ねぎまも文句なく美味しく、タレが少しあっさりしているのが特徴です。焼きたてをその場で食べることもできますが、食べ歩きは厳禁です。その場で食べることを告げれば、お皿に乗せて渡してくれます。
また、店頭で焼いているホルモン焼きがなんともいえず食欲をわかせます。香りだけでなく見た目が道行く人の足を止め、気がつくと列に並んでいる魔力があります。キャベツなどの野菜も柔らかく味が染みていて、ご飯やビールが欲しくなります。
これらを持ち帰りにして、近くの荒川土手に座りながら頬張ると、なんとも言えない贅沢な気分に浸れます。青々とした土手の草花、広い空、のんびりと流れる荒川に囲まれて、美味しい食べ物とビールがあれば他に何が必要なのでしょうか。特に春のうららかな陽気であれば、このまま横になって天国へ召されてしまっても構わないという気持ちさえします。
テレビや情報誌でも有名な砂町銀座商店街ですが、縁がないとなかなか出向く機会はないでしょう。段々と暖かくなるこの季節、ぜひ立ち寄ってみていただきたいと思います。