移ろう季節とニレケヤキ

春分に入りたての3月21日、ついに東京で桜の開花宣言が出されました。開花の確認は靖国神社の境内にある標準木で行なわれますが、今年は去年と同じ日に宣言されたそうです。

ニレケヤキ:2016年7月3日

桜が咲くと、日本のほぼすべての人が「春になったな」と実感すると思います。また、昨年から巡ってきた季節に思いを馳せ、一年の重みを感じたりします。しかしながら、そのような気持ちは桜を見なくとも感じることができます。毎日通う路地に生えている草木や、ベランダに置いている植木に注目していると、一年を通して様々な姿を見せてくれます。

ニレケヤキ:2016年7月24日

写真は、昨年「お富士さんの植木市」で購入したニレケヤキです。この植木市は毎年5月と6月の終わりに浅草の浅間(せんげん)神社周辺で開催されるもので、たくさんの植木商が集まります。ケヤキはニレ科のケヤキ属に属しますが、ニレ科のニレ属のアキニレが盆栽用の名前としてニレケヤキと呼ばれています。このコラムの最初の写真はまだ購入したての頃で、その次の写真が芽摘みや葉刈りをした後のものです。よく見ると、摘まれた後に生えてきた葉の端が白くないことがわかります。

ニレケヤキ:2016年12月4日

夏の間はとにかく旺盛に葉の数を増やしていくのですが、12月の初旬頃から少しずつ紅葉し始めます。しかしながら、まだ緑の部分を多く残しています。この写真は12月4日の状態です。

ニレケヤキ:

さらに一週間経った12月11日、日差しの傾きもすっかり晩秋の風情を感じます。心なしかニレケヤキも哀愁を感じさせますね。他の植物もぼちぼちと冬支度を始めています。

ニレケヤキ:2016年12月8日

12月18日。一週間ごとに葉の色は変わっていきます。街路樹のケヤキたちは紅葉を終え、ちらほらと落葉し始めています。ニレケヤキはほんのりと緑色を残しながら、黄色からオレンジに色づいています。

ニレケヤキ:2016年12月24日

こちらはちょうどクリスマスイブの12月24日。冬至を迎えると、葉の色は緑の部分がなくなりオレンジと赤色に染まりました。奥にあるクマヤナギも綺麗な黄色い色に染まっています。ここから風とともに落葉し、枝だけでじっと冬を耐え忍びます。

ニレケヤキ:2017年3月5日

しばらく間を置いた3月5日。虫たちやあらゆる生命が息を吹き返す啓蟄(けいちつ)の始まりです。渇色のニレケヤキの枝の先にも美しい緑色の芽が姿を現し始めました。手毬のような形がなんとも愛らしいです。

ニレケヤキ:2017年3月19日

そして2週間後の3月19日。芽が葉のかたちをしてきました。これから葉の数をさらに増やして、一年が再び繰り返されます。

紅葉から落葉、芽吹きの写真が多かったのですが、実際は夏の頃も様々な変化を見せてくれます。桜だけでなく、こうして同じ植物を眺めていると一年の移ろいを強く感じることができ、自然や季節がより身近に感じることができると思います。このニレケヤキとは、まだ春の付き合いがないので、これからとても楽しみです。

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