Indochinoise(アンドシノワーズ)

先日、鳥越のIndochinoise(アンドシノワーズ)で食事をしました。アンドシノワーズはインドシナ三国(ベトナム、カンボジア、ラオス)の料理を紹介するレストランです。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

東南アジアの料理を提供するお店は数多(あまた)ありますが、このお店は三国の古典料理・家庭料理(1887年から1954年)を取り扱う稀有な存在です。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

Indochinoiseという店名はフランス語の「インドシナ半島の」または「旧フランス領インドシナの」という形容詞です。コロニアル文化と華僑、現地の風土が溶け合った独特の文化を料理をきっかけに広く紹介しています。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

頻繁に現地に赴いては、陸路では到達が難しい場所へカヤックで向かったり、田舎町を訪ねて現地の料理を学んだり、地元の文化や風習を調査するなど、その活動はレストランや料理研究家といった枠組みにはとらわれない好奇心と探究心に満ちあふれています。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

食器や店内に飾られた調度品は当時のアンティークを使用しているそうで、椅子に腰掛けると、ふっと異国に訪れた気持ちになります。空調は極めて快適なのですが、調度品のせいか、しっとりととろみを帯びた艶かしさも感じます。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

また、目の前の豊かな鳥越神社の杜が素晴らしく、異文化がやさしく融合した心地よさや懐かしさも感じました。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

さて、料理については文句のつけようがない完成度でした。さまざまな香草の芳香が豊かに折り重なり、餅米粉などの穀類が繊細な甘みを与えています。現代の人々の舌に合わせたのかと思うほど調和の取れた味わいですが、日本の食材を用いることはあれど、現地の味付けや作り方を忠実に再現しているそうです。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

私が東南アジアに降り立ったのはヤンゴン(ミャンマー)とシンガポール、バリ(インドネシア)、そしてベトナムは空港だけです。アンドシノワーズが巡るメコン川周辺の風土や文化に触れたことはないので、口に含むごとに彼らの研究と冒険の旅を追体験するような興味深いひとときを過ごしました。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

お客さんたちはリラックスした雰囲気のなか、思い思いに料理を楽しんでいました。料理のレシピが気になる人、美味しい料理に囲まれながら再会の場を楽しむ人、いろいろな人がいます。オーナーのひとりである田中あずささんはテーブルをまわりながら、一品ずつ丁寧に料理を解説してくれます。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

実はあずささんともうひとりのオーナーである園健さんとは旧知の仲で、私の敬愛する仕事の先輩を通じて知り合いました。二十年ほど前はまだアンドシノワーズを開いていませんでしたが、当時も非常に活発的でクリエイティブな刺激を与えてくれました。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

彼らも先輩を大切に思っていて、お会いしていない間も勝手にシンパシーを感じていました。今回、彼らの活動をじっくり体験できて、新たな刺激と喜びを感じました。いつも彼らの噂を聞いて嬉しく思っているだけでしたが、今回食事に誘ってくれ、再会する機会を与えてくれたパートナーに感謝したいと思います。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

かつてのインドシナの文化は日を追うごとに失われつつあるといいます。料理はもちろんのこと、それを育んできた自然の営みや生活習慣、言葉など、失ってはじめてその価値や規模の大きさを実感します。

東京都台東区鳥越:Indochinoise

アンドシノワーズに触れることで、インドシナの文化とともに、失われるものの価値や興味を追求する好奇心に目を向ける大切さを再認識させてくれました。アンドシノワーズはいつも満席なのでなかなか予約が取れないのですが、ぜひご自身の五感で体感していただきたいと思います。

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