小さな事柄

もうあと数日で十一月です。少し前まで年が始まったばかりだと思っていたのですが、あっという間に年末を迎えてしまいます。年を重ねるごとに本当に時間の流れが早くなります。

東京都豊島区雑司が谷 大鳥神社:猫

このコラムを始めたのは五年前、まだ私が三十代でした。その頃のことも鮮明に覚えていて、ほんの少し前のことのように感じます。しかしながら、そんな風にぼうっとしていると、あっという間に手の届かないほどの過去が増えてしまうような気がします。

クマヤナギ

肌細胞や骨などはある一定期間に入れ替わってしまうといいますが(ちなみに全身の細胞が入れ替わるという話は嘘のようです)、私たちの人生のほんの短い間には様々な変化が起こっています。

例えば、近所に花をたくさん咲かせる立派なサボテンが生えていましたが、数年前に切り取られてしまいました。いつもそれを眺めていて印象に残っていたのですが、今では跡形もなくなり別の植物が生えています。それでも私の日々の生活は変わらず続き、同じような毎日が続きます。

東京都北区 神谷銀座商店街:猫

馴染みのお店がなくなっても、古くからある邸宅が取り壊されても、私の人生には大きな影響はありません。しかしそれらは日々積み重なって大きくなり、気がつけば周りの大部分が変わっていたことに気がつきます。そんな時に人は「あの頃と比べて随分時間が経ってしまったのだな」とようやく気づくのです。

道端で出会う野良猫たちも気がつけば姿を消していたり、世代交代していたりします。仲良くなって印象的だった猫もいれば、そうでない猫もいます。彼らを思い出すこともありますが、巡りゆく私の日常は何事もなく進んでいきます。

月

もちろん、自分に直結するような事柄の場合には大きな印象を残します。自分自身が大きな病気をしたり、親や兄弟が亡くなったり、大切な恋人を失ったりした場合、それが起きる前と後では、大きな時間の隔たりを感じやすいものだと思います。

猫

ひとつひとつ身の回りに起きていることを繊細に覚え、心に刻んでしまっては、とても身がもたないのではないかと思います。しかしながら、私はそういった事柄に愛着を感じ、細かく記憶しておきたいと思っています。このコラムもその一助となってくれていますし、写真を撮ることもその一環です。こういう物事の捉え方をしていると老け込みやすくなるのではないかと思いますが、そんな老いであれば私は肯定的に受け止めて良いのではないかと思います。

築地中栄のカレーで作ったカレーライス

何気なく目に入るものを味わい慈しむことができれば、より自分の日常を大切にすることができます。逆にそれらが過去のものとなった時の寂しさは増えてしまうような気がしますが、目をそらさず受け止めたほうが私自身にとってはよっぽど有益なように感じています。

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