人との結び付き

犬と猫にマイクロチップの装着を義務づけた改正動物愛護法が参院本会議で可決、成立しました。無責任な飼い主や業者の行動を抑制する効果などが見込まれています。

東京都豊島区雑司が谷:猫

私は動物虐待を抑止できるのであれば賛成なのですが、こんなことまでしなければならない時代になったのかと残念に思います。しかしながら、動物虐待は過去にもたくさん行われていたと思うので、現代だから人々の心が荒んでしまったということではないのかもしれません。

テクノロジーの進歩が社会の役に立てるであれば、それはよいことだと思います。最近は監視カメラによる犯罪者の追跡も成果を生み出しているように思います。また、ドライブレコーダーによって煽り運転が抑止されたなんていう話もよく耳にします。

しかしながら、得も言われぬ不安を覚えるのも事実です。人間はテクノロジーの進化や法整備など、システムやルールに頼りきって社会の秩序を保とうとしているのはとても怖いと思っています。

過去ではそのような精緻なシステムを作り出せなかったことによって、人の繋がりに頼ることしかできませんでした。よく言われることではありますが、地域の人との関係を良好にして社会の秩序を保つことの大切さも感じられずにはいられません。いわゆる「向こう三軒両隣」というものです。

東京都墨田区東向島:猫

とは言うものの、私自身も人との結び付きを軽薄にしていると感じています。
最近、近くの家のお婆さんを見かけなくなってどうしたのだろうと思っていたら、亡くなっていたことを知りました。近所の方に聞くと彼女の息子夫婦は彼女の死を近所に知られたくないので伏せていたようです。親しい間柄ならいろいろ気遣いをしたいところでしたが、ほとんど交流がなかったので空気を読んで息子夫婦の願い通りに気づかない、別の意味での「気遣い」をしました。

相手が信用してくれないのであれば、自分も信用しない。相互不安がますます人間関係を希薄にし、代わりにシステムに頼ろうとします。
相手に干渉したい場合は自身の安全を担保できるように、一方的に意見だけします。集合住宅での管理人を通した苦情の張り紙やSNSでの実名を伏せた非難などにそれが垣間見えます。

私は最近、趣味で商店街のお店を巡り店主にインタビューをして記事を書いていますが、時折「怖いセールスの人だと思った」などと不安にさせてしまうことがあります。「最近は物騒ですから、そう思われても当然です」と答えますが、まったくもって致し方がないことだと思います。

相互不安を助長する時代になり、将来はさらに色濃くなっていくのではないかと思っています。まだ人との結び付きを信じられる私のような世代は、若者たちを不安にさせないように努力していかなくてはならないと思っています。

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