先日は知人の誕生日だったので、プレゼントにNikonのフィルムカメラとマニュアルレンズをプレゼントしました。
彼は日本に住むイギリス人です。歳は私より少し若いくらいなのですが、写真を撮るようになったのはデジタルカメラからと少し遅めのスタートでした。しかしながら、日々技術を磨いて上達しています。彼の話を聞いていると、本当に写真が好きなんだなあと思うほど、ひたむきな姿勢で取り組んでいます。
そこで、誕生日にフィルムカメラとマニュアルレンズをプレゼントすることにしました。デジタルカメラでは想像しにくい撮影のしくみを理解できたり、アナログならではの緊張感がこのうえなく楽しいからです。
カメラとして選んだのはNikon EMです。カメラマニアの方なら説明不要ですが、EMは1980年に発売された絞り優先AEのみの初心者向けモデルで、コンパクトな外観から「リトルニコン」と呼ばれていました。イタリアのジウジアーロがデザインしたこともあり、私はこのモデルを気に入っていました。2台所有していたのですが、1台はモルトの腐食やファインダーのごみ、表面の擦れなどが結構あったので、綺麗なほうをプレゼントしました。
レンズはいわゆる「ヨンサンハチロク」、Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5にしました。このレンズは低価格でよく売れ、長く愛されましたが、評判としてはイマイチでした。ただ、私はカラフルな被写界深度の目盛りが好きで、年代違いの物を何本か所有しています。「EMに合わせるならパンケーキ（50mm F1.8）だろ」とおっしゃるのはわかっているのですが、ある程度融通のきかないレンズを使ってみて、乗りこなす楽しみを味わってもらいたいなということと、単に私が複数所有しているからというふたつの理由があります。
私は初心者モデル、汎用モデルが好きなようで、Nikon EM以外に好きなのは「シンプルニコン」と呼ばれたNikon FEです。FEも絞り優先AEを搭載してあるので、カメラのしくみがわからない方でも使いやすいと思います。
なによりもデザインがシンプルで潔いところが好きです。FEよりもFMのほうが市場でも人気がありますが、私はFEのほうが好きです。
ニコマート（Nikomat）も好きです。ニコマートはプロ用モデルばかりだったニコンが中級機として売り出したシリーズで、この写真はNikomat FT3です。絞り連動方式がAi化したニコマートシリーズの最終モデルですね。これ以前のモデルは「Nikomat」の書体が丸っこかったのが「Nikon」のものに近づいているところが好きです。このモデルを最後にしてニコマートの名前は消滅してしまうので、そんなブランドの変遷に思いを馳せるのがなんともいえずロマンを感じます。
では、自分自身がいちばん愛用しているモデルはというと、Nikon Fです。「初心者モデルでなく、プロの王道モデルじゃないか」とおっしゃいますよね。はい、気持ちはよくわかります。しかしながら、このNikon Fで撮影しているときがいちばん楽しく感じるのです。露出計が内臓されていないので、セコニックのツインメイトL-208などでわざわざ露出を測らなくてはならないですが、その「わざわざ」がとてもよいのです。また、電池がなくても動くという信頼度の高さも魅力のひとつです。ほかの好きなモデルはどちらかというと蒐集（しゅうしゅう）という観点なのですが、Nikon Fは機能的なところ、シンプルながら質実剛健な部分に魅力を感じます。もちろん、亀倉雄策デザインの外観も素晴らしくて大好きです。
このほかにもいくつかのモデルを所有していますが、延々と続くのでこのくらいにしておきます。
結局、機能性においてはフィルムカメラはデジタルカメラに劣ります。ではなぜわざわざフィルムカメラを使うのかというと、やはり撮影の基本に立ち返ることができるからだと思います。写真を撮る楽しさや緊張感、自身の技術の未熟さを痛感したり、成長を実感できることがなにより楽しいと感じます。また、フィルムカメラに向き合う時間を作る余裕も大事にしたいと思えます。
フィルムカメラは極上の状態のものやレアモデルを求めなければ、安価で購入することができます。知人にプレゼントしたカメラとレンズもご存知のように、たいした金額にはなりません。なにより彼はNikonユーザーなので、古いモデルを手にして眼をときめかせていたのがとても嬉しく思いました。早速英語のマニュアルを発掘して研究しているといいます。これを機会に知人もフィルムカメラに興味をもってもらい、写真に対してさらなる愛情を深めてもらえればと願っています（そして、共に沼にハマってくれたら嬉しいと思います）。
