台風の空

台風10号が日本に上陸した八月十四日、私は荒川土手にいました。空の風景が素晴らしく、どうしても広いところで見たかったからです。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

その日は池袋に用事があり、私は外出していました。空を見上げると大きな雲がいくつも強い風に押し流され、美しい模様を描いていました。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

その景色に圧倒され、私は用事を済ませると無意識にバスに乗り込みました。ビルの隙間からではなく、もっと開けた場所でこの大スペクタクルを目の当たりにしたいと思ったからです。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

私は過去のコラムでもお話ししたように、空を見るのが大好きです。とくに大きな雲が発生する夏の空がお気に入りなのです。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

台風が発生したときはさらに多くの雲が発生します。それらが強い風に押し流されて、さまざまな形に変わります。気まぐれに作られた雲の谷間から太陽の光が降り注ぎ、なにかの啓示のように神々しく輝きます。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

同じ場所で眺めていても、空の模様はめまぐるしく変わります。もしも空を飛ぶことができて、雲の谷間に入ることができたら、どのような光景が広がるのでしょう。

東京都足立区鹿浜:台風の荒川土手

飛行機に乗っていると、そういった壮大な光景を楽しむことができます。海外出張が多かったせいで、時間に追われ、長蛇の列に並ばなくてはならない経験をたくさんしたことで、私は飛行機嫌いになりました。しかしながら、飛行機から空を眺めていると、そのような苛立ちは払拭されます。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

空を眺めていると、自分の想像の翼がさらに大きく広がるような気がするのです。自分がもし生まれ変わるとしたら、鳥かH2Oになりたいと思うくらいです。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

台風前後の空は、飛行機で見るのと同じような空を見ることができます。さらに地面に足をつけて見上げることで、より現実味を伴って空の存在を感じることができます。

東京都足立区江北:台風の荒川土手

自分がちっぽけで、そして世界はとても大きいと実感できます。それは心細いように感じますが、逆に大きなものに包み込まれているような安心感があります。大半の宗教は神様が空の上にいると伝えていますが、そのように考えるのもなんだか納得してしまいます。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

この日は大気の状態が不安定だったので、スコールのように突然激しい雨が降っていました。そのため、土手には虹が架かっていました。

東京都足立区江北:台風の荒川土手

草木やコンクリートが雨雫で満たされ、瑞々しい色彩を放っていました。ここ最近はとても暑い日が続いていたので、雨に濡れる人々も少し嬉しそうに見えました。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

青空が見えるのに、水溜りには波紋が広がっています。なんて美しい光景なのでしょうか。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

大きな水溜りには、空に浮かぶ雲が映し出されています。空と大地という別々の世界がひとつに結ばれたような、幻想的な雰囲気が漂います。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

サイクリングやジョギングにいそしむ人々が雨でずぶ濡れになっていましたが、どこかこの気まぐれな天気を楽しんでいるように感じました。

東京都足立区新田:台風の荒川土手

実は最近、私は長年勤めていた会社を辞めました。
現在はしばらく休養をしているのですが、こうして天気の様子を見て行動できる自由を満喫しています。

東京都足立区鹿浜:台風の荒川土手

人生のなかでこんなに気ままに生活できる時間は少なく、とても貴重に感じる反面、なぜ人は自分の時間を思うままに使うことができないのかと不思議に思ったりもします。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

土手に生えている草花のように、自由になれないかなと思ったりもするのですが、実際は野生の生き物たちのほうが生きることに精一杯なのだと思い直します。

東京都足立区鹿浜:台風の荒川土手

どれだけ自分が甘えているのかと顧みることができるのも、こういった自由な時間があるからなのだなとあらためてその価値のありがたみを知ります。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

この日はいつも訪れている江北橋周辺から、赤羽の岩渕あたりまで歩きました。普段とは逆側の荒川の東側をしばらく進んでいると、緩やかに日が沈んでいきます。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

日の出や日没というのは、どうしてこんなにドラマチックなのでしょうか。さらに、空の状態が不安定だと美しい日の光が複雑な模様の雲と絡み合って、神々しさがより引き立ちます。

東京都北区鹿浜:台風の荒川土手

子どもの頃も、青春を謳歌していた時期も、老いさらばえたときも、今現在も、皆一様に太陽の美しさに感動します。その理由はわかりませんが、意味など考えずにずっと眺めていたいと思えます。

東京都足立区鹿浜:台風の荒川土手

今回は私が目の当たりにした美しい風景をみなさんにも見ていただきたいと思ったので、写真の枚数に合わせて文章量を調整しました。したがって、あまり文章には意味がありません。また、実際の光景に比べたら、掲載している写真はその魅力を1パーセントも描ききれていません。

このような光景にふたたび遭遇するときは、ぜひあなたと一緒に味わいたいなと思っています。

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