約1ヶ月前から続く室積の旅のお話も今回で四回目です。前回は昼間の室積を紹介しましたが、今回は夕暮れから夜にかけての室積を紹介します。
室積の海岸は西に向いていることから、海に沈む夕焼けを見ることができます。昼間もとても美しいのですが、夕暮れ時になるとさらにその美しさを増します。
宿泊している建物には、多くのツバメが戻ってきます。何羽いるのかわからないくらいの群れになって、巣の周辺を幾度となく離れては引き返してきます。
彼らは室積の地で生を授かり、育ち、これから東南アジアなどの遠方へと旅立つのでしょう。そしてふたたび戻ってくるのでしょうか。
昼間にあるいた室積の街には、少しずつ街灯が灯り始めました。とても穏やかな光景です。
室積と牛島の連絡線「牛島 うしま丸」が小さく見えます。穏やかな波の間に尾を長くひいて牛島へ戻っていきました。汽笛が静かな海に響き渡ります。
前日は台風の最中だったのでほとんど景色は見られませんでしたが、この日はいつもの穏やかな室積の夕暮れを眺めることができました。
日がとっぷり暮れたので、夜ご飯を食べに出かけます。室積は基本的に車での移動ですが、のんびり歩いていくことにします。宿泊先は高い場所にあるので、坂をくだっていきます。
住宅街は街灯が少なく、足もとをきちんと確認しないと分からないくらいです。ざっとGoogle Mapsでルートを選んで進んでいくと、六年前に歩いた道に出くわして懐かしい気持ちになりました。
空の向こうでは夕日の残り火がうっすら見え、頭上にかかってる雲の隙間から星空が見えはじめます。神津島の星空も綺麗でしたが、室積も負けず劣らず多くの星々が輝いていました。
国道沿いまでたどり着くと、東京ではあまり見られないファミリーレストランのジョイフル(赤坂などにはあるようです)の灯りが輝いていました。看板の雰囲気と相まって、まるでアメリカのダイナーのようです。
しばらく歩いてお店を探しましたが、室積は飲食店が多くありません。六年前にも利用した「十五万石」というラーメン屋さんに入ることにしました。
このお店は中華料理だけでなく、居酒屋のようにお酒を飲むこともできます。気さくなご夫婦が経営されていて、気兼ねせずにくつろげます。私は綺麗で堅苦しいお店よりも、こういった庶民的なほうが安心します。
まだ夏の暑さが残る時期だというのに、グラスの絵柄が季節外れです。こういうところが、愛嬌があって好きです。
年配の方だけでなく、学生や若者も常連のようです。ラーメン屋のカウンターで黙々と食事をする若者の後ろ姿は、自身の青春時代を思い起こさせます。
室積はとても美しい見どころがたくさんありながら、観光地らしくないのが気に入っています。食べるところも地元の人たち向けのお店ばかりで、それがかえって自分が特別扱いされていない、この土地に受け入れてもらったような気がして安心します。
室積には人生であと何回訪れるのかわかりませんが、これで最後にはしたくありません。またここを舞台に小説を書けたらいいなと思います。