京都北野天神近くの造酢屋、齊藤造酢店がつくる玉姫酢が販売終了となりました。
まろやかな味わいが魅力で、全国に多くのファンがいました。家族経営のために製造数が少なく「幻のお酢」と呼ばれていましたが、本当に幻となってしまいました。原因は新型コロナウイルスなどの社会的事情や従業員の高齢化、労働力の確保が困難になったことだそうです。
私は行きつけの亀有にある佐野みそ本店で購入していました。やさしくまろやかな味わいだけでなく、ラベルも美しくてお気に入りの逸品でした。
世の中は必ずしも良いものが残り続けるとは限りません。これまでも多くのものが消失し、忘れ去られていったことでしょう。そのようなものや関わってきた人たちに触れると心を締め付けられるような辛い気持ちになりますが、自分にできることはあまりなく、感謝することと、記憶にとどめることぐらいしかできません。
私よりもパートナーのほうが販売終了に意気消沈しており、七月末に佐野みそ本店でその事実を知ったときはしばらくなにも言葉を発していませんでした。「ご家族に一本ご提供しています」と数少ない在庫を渡していただいたやさしい店員さんの心遣いに感謝します。
このまま記念にとっておきたいですが、使わなければその良さは味わえません。最後の一本を大切に使っていきたいと思います。
