仕事と本

少し前まで、私は若い後輩たちとの1on1でビジネス書を薦めていました。彼らの将来や能力向上のために必要だと思われる書籍を探し、購入して一読し、目的に沿っていると思ったら一ヶ月間貸し出すのです。強制はしたくないので感想はほとんど聞かずにいたのですが、あまり役立っている感じはしませんでした。

コムラサキ

私が過去に勤めていた会社では、書籍から仕事のヒントを得る同僚がたくさんいました。数社転職しましたが、どの会社でも当たり前のように本を読んでおり、気に入ったものを紹介し合っていました。とりわけ、コンサルファームにいた頃は、新卒の方々が貪るように本を読んでいたのが印象的でした。

これは本人たちが書籍にどれだけ親しんでいるかにもよりますし、仕事の知識を書籍に求めているかにもよります。また、人が学ぼうと思うのは、自発的に行うことが前提であるといえます。まわりがどれだけよいと思っても、本人が必要と思わなければ興味を示さないのです。

1on1での体験設計が破綻していることが分かったので、彼らが読みたいと思うタイミングで手に取れるように休憩室に書棚をつくりました。しかしながら、三ヶ月ほど実施した結果は誰ひとりとして借りることはありませんでした。「じっくり読みたかったけど時間がなく、一ヶ月が過ぎてしまった」という言葉をヒントに整備しましたが、実際は興味がなかったのか、本当に時間がなかったのかもしれません。

「読みたい本はあるけれど、お金がない」という意見もあったので、会社で書籍代を補助する制度も考えましたが、こちらも効果があるのかは怪しいです。普段会話をしていると本を読む習慣がないことが分かるので、おそらく喜んで利用するのは私くらいになるのではと思います。

こうなるとすべて無駄な気がしてきますが、いろいろと試してみることは大切だと思います。実行して検証し、さらによい方法を見つけられる可能性があるためです。また、若い彼らが同じ立場になったとき、この経験をいかして適切な方法で後進を育てられるかもしれません。

本は主題を系統立て、集約し、構造的に理解できる素晴らしいものです。私の世代にとってこれほど便利なものはありませんが、もしかすると今の世代は別の上手いやり方で知識を収集できるのかもしれません。

最終的には本を読むことが目的ではなく、必要な知識を身につけて成長することです。彼らはこれから多くの責任を担う立場になり、自ずと知識を吸収しようとするはずです。その際に、私は個々にフィットした方法でサポートできたらと思っています。

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