ぼちぼち二周年

2013年9月1日からこのコラムを始めて、そろそろ2周年です。
読み返してみると様々なことがあったようで、実はあまり変わっていないような気もします。

東京都豊島区雑司が谷:雑司ケ谷霊園

最初のコラムは「センチメンタル:雑司ケ谷霊園」。私の小説「センチメンタル」の舞台となる雑司が谷の霊園を紹介したものです。
掲載されている写真を見ても、さすがに墓地だけに変わっているところはほとんどないようです。しかしながら、日々訪れていると、墓石が増えたり減ったり、自然の移り変わりも含めて少しずつ変化があることがわかります。

また、自分自身の心境が変化していることもわかります。以前は無造作に墓地や緑を眺めるだけでした。今では植物の名前や形を調べ、移りゆくその種類に目を凝らしては、心に記憶しています。また、どの種類の野鳥がどの辺りに集まりやすいのか把握していたり、霊園内の墓地の配置なども記憶していたりして、よりこの霊園に親しみを感じています。

東京都豊島区雑司が谷:ドウダンツツジ

例えば、野鳥がさえずる声を聞いて、あれはオナガだとか、シジュウカラだとか、ヒヨドリかムクドリかわかるようになりました。

春にはカタバミやヒメジョオンが花を咲かせ、その次にドウダンツツジ、活発なヒナゲシ、そして今の季節はムクゲが優雅に花を咲かせます。

死者を弔う人々の足は絶えることなく、お線香の香りが辺りに漂います。
その脇で、江戸一うなぎ屋の蒲焼の香ばしい匂いに心が揺らぎます。

無縁仏となったお墓は次第に撤去される運命ですが、それらを労わるようにドクダミの花が墓石を取り囲みます。

東京都豊島区雑司が谷:オナガ

恐らくは、この霊園は私が死ぬまでなくなることはないでしょう。このような緑豊かな場所が残り続けるのはとても嬉しいものです。直接この霊園のお手伝いをできることはありませんが、私の思いや気持ちは残り続け、また多くの人々の心もこの場所を優しく包み込んで、見守っていくことでしょう。
今の世代にも、次の新しい世代にも、同じように優しい時間を与え続けてほしいと思っています。

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