小さな町の記憶

春は別れの季節と言いますが、今日は思いがけない別れの場面に遭遇してしまい、少しセンチメンタルな気持ちになりました。

東京都台東区東上野:下谷神社のアヒルのガーちゃん

浅草の合羽橋商店街に出かけた後に必ずと言っていいほど訪れる下谷神社。そこに長く住み続けていた三羽のアヒルが新天地へと旅立ちました。元々はガーちゃんというアヒル一羽のみでしたが、気がつくと二羽増えていて、好物のスイートコーンを元気よく頬張っていました。ガーちゃんは少し年取っていたのか若い二羽に圧倒されて、少し離れた場所から恨めしそうに見つめている姿に癒されていました。

いつものように近くのコンビニでスイートコーンの缶を二つ買って、三羽は元気かなと思いながら神社へと向かいました。若い二羽のうちの一羽は足が悪かったので少々心配でしたが、到着すると一枚の張り紙が貼ってあるだけでした。

そこには「三羽は横浜の家に引き取られた」と書かれていました。恐らく何か事情があって引き取られたのでしょう、処分をされたわけではないですし池のある家に住ませてもらえるなんて喜ばしいことです。しかしながら、もうあの三羽に会えないと思うと寂しい気持ちになります。

東京都台東区東上野:下谷神社のアヒルのガーちゃん

東京を散歩していると、このように歴史にも残らない小さな変化にいくつも出会います。近所で顔を合わせる野良猫が死んでしまったとか、古くて雰囲気のある家がマンションに変わってしまっただとか、立派に花を咲かせるサボテンが伐採されてしまっただとか、数えるときりがありません。
とても寂しいことではありますが、この寂しさは、変わってしまった後に訪れる人たちには知り得ないことを私が大切なこととして記憶している証拠だと思いますし、こうして写真やコラムで記録できていることも貴重で幸せなことだと思います。

ガーちゃんたちが食べるはずだったスイートコーンを持ち帰って、彼らのことを思い出しながらつまみたいと思います。きっと甘い味のはずなのに、ほろ苦い味がすることでしょう。良い飼い主の元で三羽が幸せな人生を送ることを祈ります。

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