「パルテノペ」で陽太はピアノを演奏します。
敏志はその旋律を聴いて「ベートーヴェンのピアノソナタ第三十一番の第一楽章」だと言います。
結局、陽太は違う曲を弾いていたのですが、このピアノソナタを聴いたことのない方であれば、読んでいる際に第三十一番とはどのような楽曲なのだろうと想像したかもしれません。
ピアノソナタ第三十一番変イ長調作品110。三つの楽章から成り、「嘆きの歌」と呼ばれる第三楽章が有名です。叙情性に富み、喜びと悲しみが入り乱れたこのピアノソナタを愛する人も多いようです。
ベートーヴェンはピアノソナタを32曲発表していますが、この第三十一番は最後から二番目に作曲されたものです。
後期の作品、三十、三十一、三十二番は「ベートーヴェンの後期三大ピアノソナタ」と呼ばれることがあり、初期や中期とは異なったベートーヴェンの作曲人生の集大成と評されています。
私も劇中の敏志と同じように、図書館などでCDを借りる程度でしたので大して詳しくはありません。しかしその旋律は、郁の心を捉えたように、専門知識のない人にでも感動を与えてくれます。
映像もそうですが、音楽は一瞬にして人々の心を捉えることができます。楽器を演奏するのが苦手な私にとって、そして創作活動を行う私にとって、音楽は永遠の憧れでもあります。そして音楽は、聴くだけでもインスピレーションを与えてくれ、自身の創作にヒントを与えてくれます。いつも聴き続けている音楽ジャンルももちろんそうですが、普段は触れる機会のない楽曲にも、自分に影響を与えてくれるものがあると思います。
書籍というのは、自分の思想や考え方を作り上げる養分のような存在です。そして音楽も、同じような働きがあるように思います。手の届きやすい、口当たりのよいものばかりを選ぶのではなく、様々なジャンルに耳を傾けてみると、意外な発見があるかもしれませんね。