新潮文庫の一行手帳

新潮文庫の一行手帳をご存知でしょうか。
新潮文庫が開催している「あなたの一行に出会おう!選抜 新潮文庫」フェアで、選抜マークが付いた書籍を2冊購入すると貰えるノベルティです。

新潮文庫:一行手帳

残念ながら昨年末のフェアなので、現在では入手できません。私は知人に頼んでわざわざ中国まで運んできてもらいました。
上の写真のとおり、新潮社の文庫本とほぼ同じ装丁です。

新潮文庫:一行手帳

表紙をめくると、シンプルな罫線のメモ欄と、下に著名作品の一行が1ページずつ掲載されています。
モンゴメリ、夏目漱石、吉本ばなな。それぞれの代表作の一行が、静かに語りかけてきます。読んだことのある本の一行はとても懐かしく、読んだことのない本の一行には興味を掻き立てられます。

特別な一行には、光が燈されたような感動があります。
しかし一度本を読み終わった後には、顧みることなく忘れ去ってしまうものです。それから何度か本を読み返すことで再びその一行に出会い、心の中に刻まれていきます。また面白いことに、以前の感動とは異なる印象を受けることがあります。

私も現在は執筆を行っていますが、読者に対してそんな一行を贈ることができたらよいなと思っています。しかしながら、小説を書いている最中は、登場人物が作者の意図を超えて勝手に話し出すことがあります。そんなとき、私は自身で言葉を紡いでいるにもかかわらず、実はこれまで出会ってきた人たちが語ってきた言葉を文面に書き留めているだけなのかもしれないと思うことがあります。

これまでの偉大な作家たち、そして現在も多くの人々に影響を与えている作家の皆さんは、どのように一行を紡いでいるのでしょう。それを思うと、作品だけに限らずに、作家そのものの人生観にも興味を抱いてしまいます。

言葉は、全てを物語るものではありません。しかしそんな不完全なかたちであるからこそ、人に想像をさせ価値を広げさせるものでもあるといえます。読むことでも書くことでも私はそのような創作物に関わることができて、本当に幸せだなと思います。読み手の側である方たちも、作家の記した一行に思いを馳せ、心の中の創造を広げていただけたらと思います。

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