病院の体験設計

ここ数年、母の手術や入院で大きな病院に足を運ぶことが多く、母が他界した今も手続きで訪れます。先生や看護師、守衛の方々にはお世話になり、忙しいなかご配慮いただきました。

私はほとんど入院した経験がなく、大きな病院に通うこともありませんでした。そのため、病院特有の商慣習といいますか、患者やその関係者に対するサービスの考え方がほかと大きく異なることに驚きました。

猫

そもそも病院は一般的なサービス業とは異なるため、利用する上での快適さや便利さに重点をおいていません。そのため、慣れていないと不便や不満を感じることが多いです。

たとえば病院を利用する上で必要な情報がきちんと提示できていないところです。そのため、平日の営業時間に病院内をあちこち回り、錯綜した情報に迷いながら手続きを済ませます。ウェブサイトに記載されていればいいのですが、情報が古かったり不足していることが多いです。電話は混み合っていて繋がりませんし、ようやく繋がったとしても人によっては情報が不足している場合もあります。

先日も証明書の発行手続きに行ったのですが、証明書を郵送できないかと尋ねたら「郵便局のレターパックを受付までご持参ください」と教えてくれました。事前に知っていたら一緒に持ってきたのにと思いましたが、どこにも情報は掲載されていませんでした。おそらく利用者が少ないのでしょうがないのかもしれません。

氏名や連絡先を何度も書かされることも多いです。おそらく各所で場当たり的な対応でできたフローが積み重なった結果と思いますが、ITで一元化するほど費用対効果を見込めないのだと思います。

最も困るのは緊急手術など切迫した状況のときです。人体に関わり、緊急事態なのでしょうがないのですが、聞かされていた受付時間や場所が異なっているなど、情報が錯綜していると無駄な時間が過ぎてしまいます。共通化できるフローだけは整理していてくれれば混乱は避けられるのにと、ついつい自身の仕事と比較してしまいます。

職員の方の中には「そんなことも知らなかったんですか」と嘲笑したり「私の管轄ではないです」と冷たく対応されることもありますが、原因は現場ではなく全体を取りまとめる側にあると思います。もう少しユーザ側の視点に立ってより良い体験を一貫して与えられる枠組みを考えたらいいのではと思いますが、改善されるのは随分と先になるのではないでしょうか。

医療は万人に提供する義務があるので、サービス面の向上を図ると患者への費用負担がかさむことも理由にあるのではないでしょうか。病院はなにより病気や怪我を治すことが使命なので、しょうがないことなのかもしれません。しかしながら、訪れる人との接点を見つめ直し、対応を一連の体験として設計し直すと信頼関係も深まり、より多くの人に選ばれるようになるのではないでしょうか。親切に対応してくれる職員さんたちも多いですし、利用する側もされる側も混乱せずになるべく気持ちよく利用できる施設であってほしいと思います。

Scroll to top