吉原の地を訪ねる

先日、久しぶりに三ノ輪・千束・竜泉・入谷を訪れました。
最後に訪れたのは2005年頃ですから、約十年ぶりになります。

東京都台東区竜泉・千束稲荷神社

この地域で有名なのは吉原ですね。また、樋口一葉が住んでいた場所でもあります。
樋口一葉はここで「たけくらべ」という名作を残しました。
その「たけくらべ」に登場する千束稲荷神社は、この土地を代表する神社です。
江戸時代の寛文年間(1661ー72)に創建されたので、近くの吉原神社とともにこの土地の歴史を長く見守ってきたのだと思います。

上の写真は初午祭の地口行灯の様子です(写真はすべて2005年当時)。
江戸時代、どの稲荷の例大祭でも飾られていたらしいのですが、今では千束稲荷や吉原神社などを含めて数社を残すのみとなりました。

東京都台東区竜泉・千束稲荷神社

地口とは江戸時代の駄洒落のような言葉遊びで、落語でも用いられています。
千束稲荷も長い間、地口行灯は行なわれていませんでしたが、1970年代に復活したそうです。
季節は二月の寒い時期ですが、心がほっと温まるような素敵な光景です。

東京都台東区入谷

現在では吉原のあった面影はわずかとなり、ゆったりとした街並が広がります。「たけくらべ」では廓の外が主な舞台ですが、貧しいなかでもこのように穏やかだったのでしょう。
しかし、投げ込み寺として有名な浄閑寺や、震災時に490人の遊女が溺死した吉原弁財天の池の辺りに行くと、過去に潜む人々の苦しみや悲しみが浮かび上がってきます。
この世には表と裏があり、また表の穏やかな生活では覆い隠せないような影が潜んでいるのだと感じずにはいられません。

東京都台東区竜泉

吉原があった当時、樋口一葉はどのように世界を感じていたのでしょうか。
もちろん彼女の作品を読めば分かるのですが、当時に戻って聞いてみたくなります。
また私の祖母は、遊女ではありませんが芸妓でした。彼女の人生も私とは比べ物にならないくらい波瀾万丈でした。もうこの世にはいないので、今は話ができないのが残念です。

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