本というのは、人生に大きな影響を与えます。
私は小説家なので、やはりさまざまな小説に影響を受けました。しかしそれだけではなく、雑誌やカタログなど、何気ないものでも強く心に刻まれることがありました。
上の写真はドミニク・イッセルマンという女性写真家の写真集です。
私が中高生の頃、池袋にSMA館という建物があって、そこにアールヴィヴィアン・ポアンというアートショップがありました。私はそこでこの写真集に出会い、表紙に一目惚れしました。
しかし高校一年生の私にとって、とても手が出ない値段でした。買おうかどうか迷っていると、姉が誕生日にプレゼントしてくれました。
絵を描くことが好きだった私は、この写真集を見ながら模写を繰り返しました。顔を大きく切り取った表紙の構図と、モノクロームの世界に浮かび上がる女性の裸体。この純粋な美しさに、私のクリエイティビティは大きく影響されました。
こちらはエスクァイアの1992年3月号と、別冊の60年代特集です。
右はピーター・リンドバーグやアニー・リボヴィッツなどの写真家特集です。この頃、私はファッション関係のアートディレクションに興味がありました。
左はアメリカの60年代の特集本です。高校の頃はHiphopやジャズ、そして60年代の音楽が流行りました。私もその流れにどっぷりと浸かっていたので、見つけたときすぐに購入しました。
これらの本は内容もさることながら、読解力を高めたという点で影響を受けています。
当時はこの他にもSwitchなどを読んでいましたが、難解な単語や漢字が多く、さらには予備知識がないと読み進めることができませんでした。勉強もろくにできなかった私は決意して、この二冊のページを全て読み、わからないところは辞書で調べて、ボールペンで書き込みをしました。
そのおかげで読解力が飛躍的に上がりました。外国語を勉強するときもそうですが、日本語もこうやって本を限定してとことん読み込むと上達するのだな、と思いました。
ちなみに当時の本は捨ててしまったので、神保町で買い直したものを撮影しています。
POPEYE。皆さんはよく「モテるために若者が読む雑誌」とレッテルを貼りますが(笑)、数ある男性ファッション誌のなかで最もお洒落で、内容もよく練られています。マガジンハウスのいちばん良いところが出ている雑誌だと思います。
私は読者モデルの企画で銀座の編集部にお邪魔したことがあるのですが、スタイリストの祐真朋樹さんのファンだったので、お会いできて感動したのを憶えています。
さて、上の写真は「セクシーに見えるファッション」というページですが、高校当時に「うむむ」と思わずうなってしまった内容でした(笑)。
「カラーコンタクト」や「首にピタッとするアクセサリー」などは時代をよく表していますが「流行りにとらわれずスタンダードなものを着る」とか「だらしなくせず、でも几帳面すぎず」などは現在でも共感できるものだと思います。
ちなみに当時は、スケーターやアウトドア系のファッションが流行していた時代でした。その次の年はピタTなどネオパンクが流行りだしたので、こういった「自然さ」を提案したファッションは新鮮でした。
とかく雑誌のクリエイティブは入稿期限に間に合わせる、発行部数を気にする、などの制約から、似たり寄ったりな企画になってしまうものです。しかしPOPEYEは自分たちがよいと思うものを提案する編集姿勢があったので、今も昔も大好きです。
この他、図鑑やカタログ、学術本など影響の受けた本はたくさんあるのですが、パート2に持ち越したいと思います。
皆さんも実家や古い書棚から、思い出の本を引っ張り出してみてはいかがでしょうか。意外に今の自分を形成しているきっかけを与えてくれていたことに気がつくかもしれませんよ。