天道虫

時折、夏の残り香のように肌に汗を感じる日もありますが、すでに二十四節気では寒露(かんろ)の節気です。菊の花が開き、 水鳥が到来し、秋は段々と深まっていきます。

東京都北区・足立区:荒川河川敷

秋から冬にかけて、虫たちは短い命を終えたり、越冬の準備に入るなどして私たちの前から姿を消していきます。しかしながら十月の半ばの現在では、蝶が舞い、トンボが電線に一列になって止まっていたりと、まだまだ活発に活動しているようです。

東京都北区・足立区 荒川河川敷:ナナホシテントウ

先日訪れた荒川の土手にも、小さくて可愛らしい虫が私の前に姿を現しました。草の間を縫ってやってきたテントウムシです。彼の前に指先を少し近づけると、手の甲から手首まで登って、何故かブレスレットの金具のところでじっとしていました。

彼らは春に訪れたときもクローバーの中を歩き回っていたので、再び出会えてなんとも嬉しい気持ちになりました。しかしながら、テントウムシの寿命は幼虫で二十日ほど、成虫で約二ヶ月と言われています。一年間で三、四世代が命を紡いでいるのだそうです。真夏は食料となるアブラムシが少なくなるため涼しい場所で活動を休止し、冬は暖かい場所で越冬するそうです。そうなると、今回出会ったテントウムシは春に出会ったものたちの子どもになるのでしょうか。

San Francisco, CA, United States

そこで思い出したのですが、昨年サンフランシスコに出張した際にもテントウムシに遭遇していました。地下鉄の構内で私の服についていることに気がつき、そっと掌に入れて目的の駅まで連れて行きました。地下鉄の構内やコンクリートの上では苦労すると思い、比較的緑が多い生垣に放しました。別の虫ならばこうも大切にされないでしょうから、見た目が良いというのは本当に得をしているのだなと思いました。

視線を遠くに向けると豊かな色かたちをした空と雲が、視線を近くに向けると複雑な特徴を持つ虫や植物が私たちの興味を満たしてくれます。魅力的な自然に囲まれて過ごすことができるというのは、なんとも贅沢なものだなと思う今日この頃です。

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