大統領選とバスの出来事

米国の大統領選挙の決着がつきましたね。今回の結果に驚く人が世界中で何億人いたのかと想像してみると、計り知れないインパクトだったのではないかと感じています。

かつて隆盛を極めた国に住む人々が、その頃の栄光を取り戻したいと思った結果が今回の選挙結果につながったようです。かつて豊かだった中産階級の人々は、現在あらゆる社会不安に怯え、現状を打破できないまま苛立ちだけが募るばかりでした。米国自身が作り出したとも言えるグローバリゼーションの影響によってあらゆる人種の人々が自分たちの近くに存在し、日常生活の均衡を脅かしていることも大きな懸念となっていました。

これは米国におけるメキシコの不法移民の話だけではなく、ヨーロッパの難民など世界規模でトレンドとなっている問題です。ナショナリズムが台頭し、ダイバーシティを否定する世の中になってしまうと、少々辺りがきな臭い感じがしてきます。

先日、日本でも同じような雰囲気が漂っていると感じました。

休日の夕方から夜に差し掛かる頃に私はバスに揺られていたのですが、途中で大勢のアジア人の若者たちが乗車してきました。彼らは一様に酔っ払っており、楽しそうに会話をしていました。良い飲み会だったようで少しはしゃぎすぎており、静かだったバスの中は途端に賑やかになりました。

あるとき、その中の一人が気持ち悪くなったらしく少々嘔吐をしたようでした。すると、吐いた外国人の座席近くに立っていた日本人の男性が「これだから外国人は駄目なんだ。ここは日本なのだから、公共の場で迷惑かけない日本人を見習え」と怒鳴ってバスを降りて行きました。

実際「外国人」のところは具体的な国の名前だったのですが、バスに乗っていた外国人たちは異なる国籍でした。私はたまたま持っていたビニール袋を若者に手渡した際に「どこから来たの?」と話しかけて知りましたが、諭すことはあっても国籍で見下すような発言はするべきではないと思いました。

日本も米国やヨーロッパの先進国のように現在より過去が豊かであった国です。さらに次第に貧富の差が広がってきており、自身の行く末に不安を覚える人々が増えています。その不安が日本に来るアジア人に対して苛立ちとして転嫁されるのでしょうが、見ていてあまり気持ち良いものではありません。しかしながら、私自身は過去にこんなにも時代の雰囲気が読み取れることがなかったので、今回の米国の大統領選と身近なバスで遭遇した出来事が重なったことは、単なる偶然ではないように思えてなりません。

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