寒さをしのぐ

前回のコラムでは大寒の節気について触れましたが、それから寒い日が続くようになりました。夕焼け空はとても綺麗なのですが、これだけ寒いと何もする気がおきませんね。

東京都台東区上野公園 不忍池:キンクロハジロ

街路樹は常緑樹を除いてほとんど葉を落とし、乾いた枝だけが目につきます。虫たちも全く見かけることがなくなりました。雑草は元気なものも見受けられますが、夏の勢いはなく、ささやかに道端の隅に身を潜めています。
野良猫や野鳥たちは日中は活動的ですが、冬の間に命を落とすものも多いそうです。体毛が生えているとはいえ、今日のように空気も凍りつく夜空の下で過ごすのは、さぞ辛いことでしょう。風のあたらない場所を見つけて、少しでも寒さをしのいでほしいと思います。

それでも、暖かい季節が訪れると彼らは一斉に活気づくのです。小さな身体のどこにそのような力が蓄えられているのか不思議なくらい力強いものです。先日散歩していたら、もう梅の花が咲いていました。よく通る道沿いの家屋の庭に植えてあるハクモクレンも、すでに産毛を蓄えた蕾を膨らませていました。姿を見せない虫たちも土から這い出て(二十四節気の三月初めの節気、啓蟄という言葉にもありますね)旺盛に増え、雑草たちも再び道端を覆い尽くします。小さな身体で餌も取らずに三ヶ月もじっと耐え忍んだメダカは元気に泳ぎ始め、この世は再び活気を取り戻すのです。

東京都港区芝大門 芝大神宮:猫

生命というのは、とても凄まじい力を持っているのだと感じます。たとえ1ミリ位の身体でも、目に見えないほどの大きさでも、命を燃やして復活する力を持っているのです。このような神秘がすぐ身近にあるということに私は感動します。

日本の神道は、八百万の神(やおよろずのかみ)と呼ばれる森羅万象に対する観念があります。おそらく昔の人々も、とりわけ冬から春に移り変わる季節にこのような驚きと感動、そして畏怖の念を持ったことでしょう。人間も「寒い、寒い」と身体を縮こませていないで、春に備えて元気にいたいものです。

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