服装の気分

私は大学では藝術学部を卒業し、仕事もデザインやアートディレクションなどクリエイティブ関係に携わっていることから、仕事の服装もわりと自由に決められます。

猫

オフィスで毎日顔を合わせている人に、プライベートで会う際にも(またその逆でも)「あまり格好が変わらない」と言われることも多くあります。

しかしながら、仕事上の立場や状況に応じてスーツを着ることもあります。ここ最近はほとんどなくなりましたが、顧客の前に出るときには必ずスーツを着ていたものです。
スーツを着ると、ちょっと自分が大人になった気持ちになります。もしくはちょっと立派な人間になった気分になります。服というものは人間の感情に作用するもので、仕立ての良いものや有名なブランドのものを身につけると気持ちが切り替わるのです。腕時計や靴なども同じように揃えれば、自分の品格がワンランクアップしたような気持ちになります。

女性も同じように、スーツやヒールなどに身を包んでいる姿を見ると、私よりも精神年齢が上のように思えます。彼女や彼らが手入れがされていないものを着用していれば話は別ですが、自分自身がラフな格好をしていると、良い意味で少し近寄りがたいオーラを醸し出すことができているように思います。

私はバブル世代のちょっと後の世代なので、そのような姿は憧れの対象でありました。ですから自分も同じような服装をする機会に遭遇した際に、一所懸命背伸びをした経験があります。しかしながら、四十代を越えた今となっては、むしろ窮屈に感じるようになりました。

服装というのは「なりたい自分になる」ためのアイテムとして効果的です。しかしながら、自分自身が本当になりたい姿とはどんなものなのかと問いかけたら、意外に求めていた姿とは異なる場合があります。

私の場合に限っては、スーツ姿というのはちょっと窮屈なものでありました。なぜなら食べこぼしはしますし、気温によって着る服の数を調節したかったりするのです。さらに決定的なのは、他人や、特に女性に対してどう見られたいかという視点の優先順位が下がったことが大きな理由なのだと思います。

幸いにして、現在の職場ではきちんとした格好よりも少しラフな格好が業態に合うものとして推奨されています。以前はスーツ一辺倒でしたが、現在では異なる服装もスタンダードのひとつとして認められていますので、時代のタイミングも合っていたということでしょうか。

人によって趣向は異なり、様々な価値観があるのが当たり前だと思いますが、私は気負いせず身に纏えるラフな格好のほうが向いているのだと思います。さらに最近では、仕事に集中したいあまりに毎日同じ服でもいいやと思う傾向にあり、加齢によるいわゆる「オヤジ化」が進んでいるのだなと思います。

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