山田工業所の中華鍋とフライパン

お洒落でなくても優れた調理器具は無数にあります。業務用の調理器具を作る山田工業所の中華鍋とフライパンもそのひとつです。

山田工業所の中華鍋とフライパン

ここのところ、料理を作るのが楽しくなってきています。十数年前に独り暮らしを始めた頃も熱中しましたが、今再び自分の中でブームが沸き起こっています。

山田工業所の中華鍋

最近、出刃包丁をプレゼントする機会がありました。自分も魚のさばき方を覚えようと思ってそれを使っているうちに、今度は中国生活で少しかじっていた中華料理を作ろうと思い立ちました。中国で料理をしていたときは中華鍋を頻繁に使っていたので、日本で評判の良い中華鍋を色々と調べました。

山田工業所の中華鍋

すると、山田工業所の中華鍋が最も定番だということが分かりました。戦後に鉄が不足していたためドラム缶をハンマーで叩いて鍋を作っており、その製法が中華鍋の把手に刻まれた「打出し」式の原点になったそうです。鉄板を五千回打ち出すため強度が高く、表面の凹凸(おうとつ)に程よく油が馴染み、厚みも調節できるので熱も伝わりやすいそうです。

業務用では横浜中華街で八割のシェアを持つと言われる山田工業所の中華鍋ですが、実際に使ってみると熱の伝わりもよく、炒飯を作ってみると本格的な仕上がりになりました。その他の中華料理も一度も失敗がなく、かなり気に入っています。

山田工業所のフライパン

また、先日はシンプルなパンケーキを作りたくなり、フライパンが欲しくなりました。山田工業所のフライパンがあるかどうか調べてみると、やはりありました。私の作りたかったのは焼きむらのあるものだったので、鉄製のものがぴったりと思って購入してみたのですが、こちらも正解でした。

世の中の主流は厚手のフライパンなのだそうですが、私は火の通りやすい昔ながらの薄手のものにしました。1.4ミリですと薄すぎる感じがしたので1.6ミリのものにしましたが、軽すぎず重すぎずで振り返すにはちょうど良い重量感です。

山田工業所のフライパン

こちらも山田工業所の証である「打出し」印が刻まれています。中火から弱火の手前くらいにしてパンケーキを焼くと、程よい焼き跡ができます。火加減や油の具合、ターナーを差し入れるタイミングなど少々コツはいりますが、却ってそれが料理をする楽しみになります。因みにターナーは玉虎堂製作所のもので、こちらも大正八年創業のケトルが有名な老舗です。

山田工業所のフライパン

また、下ろし立てのときは錆止めの蝋を焼き切る作業があったり(蝋なしのものもあります)、洗剤を付けずたわしと水で洗わなければならなかったり、洗った後は錆が出ないように火にかけて水気を飛ばしたり、裏側は錆びるので鉄たわしで擦って油を塗ってあげたりと手間がかかります。しかしながら、使えば使うほど自分の手に馴染んで自分専用の器具に成長していきます。

料理を上手に作るだけではなく、調理器具を上手に育てる楽しさも増えてきます。山田工業所の中華鍋やフライパン、そして玉虎堂製作所のターナーも、インターネットで手頃な価格で購入できますし、かっぱ橋商店街でも簡単に手に入る業務用の調理器具です。決してブランドをひけらかすわけでもなく、高価なものでもありません。実は日本橋老舗の木屋のフライパンも、一年以上予約で埋まっている釜浅商店のフライパンも、山田工業所が作っています。

山田工業所のフライパンで作ったパンケーキ

さて、お目当てのパンケーキですが、バターとメイプルシロップをかけたシンプルなものと、ポーチドエッグを乗せたエッグベネディクトのものを作ってみました。

山田工業所のフライパンで作ったエッグベネディクトのパンケーキ

どちらも不揃いな形をしていますが、却ってそれが美味しそうな雰囲気を醸していると思いませんか?
ニューヨークやサンフランシスコのデリで食べたものもこんな雰囲気でしたが、それらもきっと油の染み込んだ鉄製のフライパンで作られたのだと思います。次は何を作ろうか色々と想像するだけでワクワクしてきます。

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