サルスベリ(百日紅)

今年の夏は暑かったり、台風が来たりとなんだか慌ただしい天候が続きます。しかしながら災害のない東京では、来年になったら今年の夏の天候のことなんてすっかり忘れてしまうことでしょう。人間の記憶は本当に曖昧なものです。

東京都豊島区雑司が谷:大鳥神社のサルスベリ

曖昧な記憶といえば、過去に幾度となく目にしていた植物でも、意識をしていないと全く気が付くことがないというものがたくさんあります。私もここ数年の間に植物をよく観察するようになりましたが、それまでは桜やイチョウなど目立ったものしか記憶に残っていませんでした。

東京都豊島区雑司が谷:大鳥神社のサルスベリ

最近ではよく訪れる雑司が谷の大鳥神社で、鳥居の横に白い花がたくさん咲いていることに気が付きました。近くに行って観察してみると、それはサルスベリの花でした。
サルスベリと言えば、名前の由来通り樹皮が滑らかでツルツルしているのが特徴です。私はそれくらいの知識と興味しかなかったのですが、今年の浅草の植木市でお店の方から花にも特徴があることを教えてもらいました。

東京都豊島区雑司が谷:大鳥神社のサルスベリ

サルスベリは漢字で「百日紅(ヒャクジツコウ)」と書き、七月から九月くらいまでの長い期間に花を咲かせます。白いものからピンクや紅のものまで花の色も豊富で、丈夫でよく咲くことから原産地である中国でその名前が付いたそうです。大鳥神社のサルスベリの花は真っ白で、都電の線路の向こう側からでも可憐な姿を眺めることができます。

東京都豊島区雑司が谷:サルスベリ

このような気付きがあると、散歩する道のあちこちでサルスベリの花を見つけることができます。住宅地の家の庭に植えてあったり、街路樹として一列に並んでいたり、今まで何度となく歩いていたところで初めて気が付くというのは面白いものです。

サルスベリは病気にもなりにくく、乾燥にもそれなりに耐えることから、栽培が比較的楽だといいます。地植えや大きな鉢で管理し熟成を迎えれば、たくさんの花を咲かせるということで園芸では人気だそうです。植木市でお店の方が熱心に勧めてくれたのも頷ける気がします。

東京都豊島区雑司が谷:サルスベリ

私は四十年以上も生きていて、サルスベリの花については全く無関心でしたが、きっかけひとつで新たな花が人生に咲いたような気がしました。ほんの些細なことではありますが、こうやって人生に彩りが加わるというのは、本当に幸せなことだなと思います。

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