蒸し暑さ

日本の夏は湿度が高く、暑さを感じやすいと言います。今の季節は外に出るとすぐに全身から汗が吹き出てきて、まさにサウナに入っているようです。

東京都新宿区河田町

「不快指数」と定義されているように、蒸し暑さは人間を不快にさせるものです。しかしながら、サウナに例えられるように、必ずしも不快なだけではないと私は思っています。

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いつぞやのコラムでも書きましたが、私はむしろ乾燥しすぎるよりは、湿度があるほうが身体に合っていると思っています。中国の大連で暮らしていた頃は、肌が乾燥して苦労した経験があるからです。湿気は程よく肌の水分を保ってくれますし、発汗を促すことで老廃物を外に出す効果もあるのではないかと思います。

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また、日本人の文化や情緒的な側面からも蒸し暑さは必要なのではないかと感じています。もし、一年を通して乾燥している風土だったなら、日本には異なる植物が生息し、異なる四季が存在していたことでしょう。そこから生まれる芸術や作風も変わっていたのではないでしょうか。

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さらに、生活の上での工夫も生まれなかっただろうと思います。
例えば、手拭いは切れ端を糸で縫い付けませんが、切れ端を残すことで水分を発散させやすくして、雑菌を繁殖を防いでいます。乾燥した風土であれば、このような工夫がなくてもすぐに乾いてしまうことでしょう。食べ物も保存方法が変わることから、今とは異なるものが生まれていたかもしれません。

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もちろん、東南アジアのように一年中湿度が高いわけではなく、乾燥した時期も存在します。湿度の差が様々な風土であるからこそ、現在の日本の文化や情緒を作り上げたのだと思います。そのひとつの要素として、蒸し暑さというのは欠かせないのだと思っています。

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このあいだの週末は不安定な天気でした。雨が降った後の湿気でじんわり汗ばみましたが、日光が適度に遮られて歩きやすかったです。蝉が天気を伺うように探りさぐりに鳴き始め、ムクゲは雨雫を付けたまま、軒先の影の中でほっと一息付いていました。アスファルトやマンションの手摺りに染みた雨の水分が徐々に乾いていく様などを眺めながら、日本の夏特有の少し気だるい雰囲気を味わうのは何とも趣のあるものです。暑い、不快だとイライラするよりは、少しこの環境を受け入れて楽しんでみるのもいいのではないかと思います。

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