彼岸花と秋の訪れ

九月も半ばを過ぎて秋分の日まであと僅かとなりました。暑さが和らいだだけでなく、ヒガンバナが咲いているのを見て、もう秋なんだなと実感しました。

東京都豊島区雑司が谷 雑司ヶ谷霊園:ヒガンバナ

先日訪れた雑司ヶ谷霊園では、まだ木々の葉も色付いておらず、一見すると夏の盛りの趣きを残していました。しかしながら、もうお墓の脇にはヒガンバナが咲いていました。赤くまとまって咲く花は緑や焦げ茶の風景の中でとりわけ目立ち、季節の移り変わりをはっきりと実感させてくれます。そういえば、鳴き止んでいたシジュウカラの声も聞こえ始めるようになり、草花たちも種類が少しずつ変わってきていることに気が付きます。

東京都豊島区雑司が谷 雑司ヶ谷霊園:ヒガンバナ

ヒガンバナは日本に住む私たちにとって身近な存在です。群生する花々が一斉に咲く様は、秋の風物詩として親しまれています。
私はそういったヒガンバナの名所に訪れたことはほとんどないのですが、人混みの中で慌ただしくするよりも、静かな近場でのんびりとこの花を見るのが好きです。

東京都豊島区雑司が谷 雑司ヶ谷霊園:カタバミ

ヒガンバナを見つけた日は雨が降った後だったのですが、草木に雨雫が残っていて幻想的でした。
陽が雲に隠れて一帯が薄暗く、そこに透明の雫が瑞々しい草木と一緒に佇んでいました。湿気を残しつつも、どこか寂しさを感じる冷たい空気がなんとも心地良く、しばらくその雰囲気を味わっていました。
ヒガンバナも細長い花弁に雫をたたえていて、より美しく見えました。

東京都豊島区雑司が谷 雑司ヶ谷霊園:マツ

雑司ヶ谷霊園にほど近い大鳥神社では、白い色のシロバナマンジュシャゲも咲いていました。
日本ではあまり縁起が良くないとされるヒガンバナですが、海外では特に言い伝えのない美しい花として愛されています。もちろん日本人にも愛されてはいますが、美しい容姿だけでなく死者とも縁の深い影のある趣きが、かえって愛おしく思える理由なのかもしれないと思います。

東京都豊島区雑司が谷 大鳥神社:シロバナマンジュシャゲ

猛威を振るった夏の気配が次第に弱まり、またすぐに冬という脅威が訪れるのですが、自然は秋という束の間の休息を与えてくれます。収穫の季節でもありますし、自然に感謝する良い機会だと思います。雑司が谷では大鳥神社の例大祭や酉の市、鬼子母神の御会式、弦巻通りの商店街(雑司が谷弦巻通り商友会)の「のんき市」など、様々な催しものがあります。これらに出かける機会があれば、少しだけ足を伸ばして雑司ヶ谷霊園に訪れて、ヒガンバナや秋の草木を眺めにいくのもよいかと思います。

Scroll to top