いちごさん

私がよく行き来する道で出会う猫がいます。その猫は路上で生活していますが、家で飼われている猫でもあります。

猫のいちごさん

その猫の名前は「いちご」さんというのですが、実は雄です。飼い主のお宅に「ミルク」という雌猫が飼われていたので「いちご」という名前が選ばれたそうです。

いちごさんはいつも飼い主のお宅のすぐ近くの路上にいます。見かけない時もあるのですが、大体は路上か駐車場にいます。海外の猫の血を引いているのか分かりませんが、とても立派な身体をしています。とても大きいので、遠くから見てもいちごさんだとすぐに分かります。
緊張感がまったくなく、車道に寝転んでいることがほとんどです。

猫のいちごさん

「いっちゃん、危ないよ」と声をかけると、彼は濁音混じりのしわがれた声で小さく返事をします。
とても面倒臭そうな素ぶりを見せるのですが、けっして人が嫌いなわけではありません。むしろ人に慣れていて、撫でると気持ち良さそうにしています。
トラックが迫ってきたので手で身体を揺らしてみても、何食わぬ顔で身体を舐め続けています。そして、ぎりぎりのところで移動を始めます。

遠くにいちごさんがいるときに呼びかけると、寄ってくることもあれば、逃げることもあります。また、無視されることもあります。身体を撫でているときに喜んでくれるときもあれば、「ふん」といった顔付きで離れるときもあります。いわゆるツンデレというやつで、その素ぶりがまた可愛いのです。
しかしながら、飼い主のお婆ちゃんがいるときはいつだって機嫌が良く、好きなだけ触らせてくれます。

猫のいちごさん

私も猫を飼っているのでよく分かるのですが、猫は飼い主に絶対的な信頼をおいています。中には飼い主に慣れない猫もいますが、それでも飼い主が人間の中でいちばん信頼できる存在に違いないでしょう。いちごさんにとってもそのお婆ちゃんがいちばんの存在です。
お婆ちゃんはよく路上に出ては、いちごさんを暖かい目で見守っています。通りかかる人がいちごさんを撫でると、必ず「ありがとうございます」と言ってくれます。彼女は本当にいちごさんのことを可愛がっていて、彼のことを嬉しそうに話してくれます。いちごさんはその脇でのんびり寛いでいます。お婆ちゃんといちごさんの関係を見ていると、心がほっこりとしてきます。

猫のいちごさん

いちごさんが路上で生活しているからこそ私は彼に出会うことができましたが、やはり交通量が少ないとはいえ、自動車が通る危険な環境ではあります。周りに気をつけながら、このままのんびりと幸せに暮らしてもらいたいと思います。そして通りがかる私たちにも、その幸せを分けてもらえたら嬉しいです。

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