人間のスペース

新型コロナウイルスの流行によって活動が制限されて、今年の春は都外に出ることを自粛しなければならない事態となりました。これまで遠方へ出向くことは当たり前の感覚であったため、息苦しさを感じたことをよく覚えています。

では、人間はどのくらいの距離を自由に移動できれば満足するものなのでしょうか。私は過去に飛行機に乗ると、閉所恐怖症に似た圧迫感や不安感を覚えることがありました。仕事で非常に悩んでいたときだったので、心に余裕がなかったのでしょう。狭い場所に長い間生活していても、同じような気持ちになるのでしょうか。たとえば、SF映画に登場するスペースコロニーは地上に比べて非常に狭い空間として設定されています。このような場所に本当に生活できるものなのでしょうか。

東京23区の東西では、江戸川区から杉並区までは大体27キロほどです。南北の大田区から板橋区までは29キロほど。面積でいうと627.6キロ平方メートルです。人生の大半を23区内で過ごしているので、これくらいの面積があれば息苦しさを感じることはありません。一方、昨年の夏に訪れた神津島は18.58キロ平方メートル。23区に比べて圧倒的に小さいのですが、地元の人々はいきいきとした表情をしていました。

そうして見てみると、人間は面積がなくてもそれほどストレスを感じないのかもしれません。しかしながら「その場所から出られない」という制限が加わると、途端に不安を覚えるのでしょう。まわりに広々とした風景が広がっていたり、外に出てもよいのだという開放感がどれほど人間の心を安定させているのかがわかります。

現在はむしろ「遠くへ行きなさい」という号令が出ていますが、早く遠方へ出向くことは当たり前の世界に戻ってほしいなと思います。

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