ヘリテイジ

「ここぞ東京」と思える場所は各個人の東京に対するイメージによって異なります。私の場合、どこがいちばんという順位は決められないのですが、人がたくさんいるところよりも静かな場所のほうが東京だと感じることが多いです。

東京都新宿区霞ヶ丘町

本日散歩した千駄ヶ谷から青山に抜ける外苑あたりもそのひとつです。都心の真ん中にありながら、緑も多く人もそれほど多くありません。地方から移り住んだ人だけでなく、その土地でずっと暮らす人も多くてのんびりとした雰囲気が漂っています。

東京都新宿区霞ヶ丘町:国立競技場

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言もあり、足を遠ざけてきた国立競技場にも訪れてみました。日本や東京が一丸となって建造したスタジアムだけあり、なかなか素晴らしいものでした。しかしながら、後利用の計画が定まっていないからか自動販売機は撤去され、人もまばらで少し寂しい印象を受けました。

巷では「負の遺産」と揶揄されていますが、これだけの建造物が無駄にされるのは惜しいものです。こういった「ハコモノ」はバブル時代にいくつも建造されましたが、訪れるとどれも物悲しい印象を受けます。作られてすぐに時代に残されつつある建物に、つい同情してしまいます。

東京都新宿区霞ヶ丘町:聖徳記念絵画館

国立競技場のお隣りにある聖徳記念絵画館、通称絵画館は大正十五年からその地に鎮座しています。竣工当時もさまざまな社会のしがらみがあったとは思いますが、その後も存在し続け今に至ります。

周辺はスポーツに適した公園が広がっており、子どもからお年寄りまで多くの人たちで賑わっていました。風景だけでなく人々の生活に溶け込んでおり、なくてはならない場所のように感じました。私も学生時代によく訪れては、物思いに耽っていたのを思い出します。

東京都新宿区霞ヶ丘町:国立競技場

国立競技場は生まれてから一年も経っておらず、絵画館に比べたらひよっ子もいいところです。存在価値を比べたら可哀想なくらい、その差には大きな隔たりがあります。

隈研吾はおそらく何十年、何百年と存在できることを願ってこのスタジアムを建造したのだと思います。私たちは政治への疑念はありながらも国立代々木競技場や駒沢オリンピック公園、ひいては絵画館のような建造物へと昇華させるべく、国立競技場を見守ってあげたほうがよいような気がします。

東京都新宿区霞ヶ丘町:聖徳記念絵画館

このようなことをぼうっと考えながら、色を変えつつある草木を眺めて散歩するのはとても有意義なものです。懐古主義で頭のかたい私のような人間でも、いろいろな感性や異なる視点に気づかせてくれます。

夏もすでに過ぎ去り、束の間の過ごしやすい季節が訪れています。皆さんも息抜きに散歩に行かれてみてはいかがでしょうか。

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