暑さも和らいで、ずいぶんと過ごしやすくなりました。これから木々の葉も少しずつ落ち始め、冬鳥も飛来します。野鳥観察にはもってこいの季節になります。
先日、20年以上も足を運ぶことのなかった地域へ赴きました。幼少の頃は父に連れられて遊びに行ったり、少年時代は自転車や徒歩で移動のために通り過ぎていた場所です。入り組んだ普通の住宅街と、桜が並ぶ川沿いの道。一見何の変哲もない場所ではありますが、住んでいる地域と少しだけ離れていたので、どこか冒険をしているような心持ちになっていたことを思い出しました。
まだ自分のなかでは野鳥観察に本腰を入れていないので、その場所を歩いていたときには35mmの標準レンズをカメラに装着していました。35mmは比較的肉眼に近い見え方で、遠くのものを大きく捉えることができないので、野鳥撮影には向いていません。
さて、最近になって、知り合いの人々に野鳥観察の質問を受けるようになりました。彼らは撮影はおろか、スズメやハト以外の野鳥になかなか遭遇することがないという疑問を持っているようです。今回は35mmレンズで野鳥を撮影したので、私がどれくらいの距離で野鳥を捉えているかをお知らせできるよい機会かと思いましたので、ここに紹介しておきます。
夕暮れ近くに川沿いを歩いているとき、小さな鳴き声が耳に留まりました。木々をよく観察すると、10羽にも満たない小鳥の群れがいました。葉がたくさん茂っていたのと、見上げての観察だったのではっきりわかりませんが、おそらく尾の短さでメジロ、もしくはカワラヒワでしょう。写真はトリミングもしていないのでとても小さいですが、写真中央に二羽くっついています。
野鳥を見つける第一の鍵は音です。さえずりや地鳴きの声が聞こえたら、じっくりその方向を見つめてみます。少し動きがあるようでしたら慎重に近づき、カメラや双眼鏡で確認してみるとよいと思います。
また、見上げると大体が空を背にして逆光なので、場所を変えて観察するか、もしくはじっと堪えて野鳥が動くのを待つとよいと思います。
次は川の風景です。実はここに、ある野鳥が一羽佇んでいます。
ぱっと見て、わかるでしょうか。
野鳥が場所を移したので、別の角度からの写真です。そうです、カワセミです。
ぼうっと川の風景を眺めていたときに、キラッと異なる輝きを見せる物体が飛んでいました。瑠璃色の宝石のように、光に反射して美しい姿を見せてくれます。近くで生まれ、この川で魚を捕えているようです。
こちら逆光からの写真なので、シルエットがよくわかると思います。
一般的に野鳥の写真は画面いっぱいに写っていることが多いのですが、35mmで撮るとどのくらいから撮影しているかよくわかると思います。ちなみに、600mmだと、この記事の写真のようになります。
野鳥を多く見つけるには、まず公園や川など植物が集まる場所に出向くのが手っ取り早いです。そして耳を澄まして野鳥のいそうな場所をぼうっと眺めます。野良猫を見つけるのが得意な人は、いつも路地裏を何気なく覗いているものです。
また、場所だけではなく最初にお伝えしたように音に敏感になるとよいと思います。普段は町のBGMとして聞き流してしまう鳥の鳴き声がいちばんの手がかりです。慣れてくると、その声がスズメなのか、シジュウカラなのかムクドリなのかわかるようになります。
こうして、意識を変えると町の見え方も大きく変わり、鳥が飛び交う素敵な世界が広がります。これは野鳥だけでなく、植物や町並みなど目の向け方によっては無限大に広がると思います。