神津島の天上山

前回のコラム「神津島と東海汽船」に続いて、神津島の旅記録を掲載します。今回は神津島の最高峰である天上山についてです。

東京都神津島:天上山

天上山は標高571.8メートル、高尾山に比べると少々低いくらいですが、宿のある神津島港から徒歩で向かったので、ほぼ海抜ゼロメートルからのスタートです。
この日も天気は晴れ、気温は30度近くありました。神津島港の信号のある交差点から黒島登山口までは舗装された道ですが、日差しが強いのですこしへこたれました。
道の途中にある山の神・冷風穴でしばし休憩し、いよいよ登山道へ進みます。

東京都神津島:天上山

黒島側はけっこうな急勾配のうえ、日差しを遮るものがなにもなかったので非常に苦しい登山となりました。とりあえず1合目、2合目と地道に進むのですが、なかなかたどり着きません。時計を見るとたいした時間は経っていないのですが、思いのほか大変でした。とにかく日差しがきつかったので、雲が太陽を覆うだけでこのうえなく嬉しい気持ちになりました。

しかしながら、景色は本当に最高でした。眼下には神津島村が一望でき、スタート地点の神津島港もはっきり確認できます。自分の足でここまで歩いてきたのかと思うと、楽しては得られない満足感があるのだなと思います。

東京都神津島:天上山のオカダトカゲ

山を登っているあいだ、草陰から「カサコソ、カサコソ」という音が頻繁に聞こえます。正体はカナヘビでした。爬虫類が苦手な方はだめでしょうが、とても可愛らしい顔をしています。

東京都神津島:天上山10合目

すこし休憩を入れながら進み、ようやく10合目に到達しました。山頂付近は盆地状になっていて歩きやすいのですが、坂道のところもあるので気が抜けません。しかしながら、山頂付近なので雲が多くて暑さが大分和らぎました。

東京都神津島:天上山

とにかく風景が素晴らしく、空の上に別の世界があるような感覚を覚えます。名前の通り、まさしく天上山。伊豆諸島を創った島々の神々がこの山に集まって、各島にどのように水を配分するか会議をおこなったという言い伝えがあるそうです。そのような伝説が残るのも納得できる、神々しい風景が続きます。

東京都神津島:天上山の裏砂漠

東のほうへ進むと、裏砂漠に到達しました。真っ白な砂に覆われ、とても不思議な雰囲気の場所でした。流れる雲が砂漠に影を落とし、太陽が現れると砂漠が美しく輝きます。雄大な景色にしばし見とれてしまいました。この砂漠に雨が降り注ぐと、やがて地中をつたって多幸湾の近くから湧き出し、「多幸湧水」という銘水になるそうです。

東京都神津島:天上山の裏砂漠

この砂漠は五月下旬に訪れると、オオシマツツジの花を見ることができるそうです。高地の砂漠でツツジが咲いている風景なんて、とても幻想的ですね。

東京都神津島:天上山の裏砂漠展望地

裏砂漠を抜けると、神津島の東側の眺望を眺めることができます。この裏砂漠展望地から、三宅島と御蔵島がはっきりと確認できます。
それにしても、なんて素晴らしい景色なんでしょうか。登山の疲れも一気に吹き飛んでしまいます。
写真では素晴らしいパノラマの景色を表現できていないので、ぜひ実際に訪れてほしいと思います。

東京都神津島:天上山のシマシャジン

天上山にはほかにも魅力的なスポットがたくさんあるのですが、午後にもうすこし海に入りたかったので下山することにしました。帰路となると草花に目を向ける余裕も出てきます。シマシャジンやキキョウなど夏と秋の花々が交互に姿を現します。

再び黒島側から下山します。炎天下でかなりきつい登山でしたが、登ってみて本当によかったと思っています。以前は時間がなく、簡易的なハイキングしかできなかったので、目標達成できて大満足でした。下山してからアイスクリーム屋さんに寄ったのですが、天上山に登ったと伝えると「こんな炎天下にすごいわね」と呆れられました。店員さんに聞いたのですが、季節は異なるけれども神津島の保育園児は天上山に登ることがあるそうです。私ももうすこし身体を鍛えないといけないですね。

東京都神津島:天上山トレッキング後のGORO ブーティエル

ちなみに、今回の天上山トレッキングは、以前コラムで登場したGOROの登山靴のデビュー回でした。ほどよく表面に傷がついています。本当に履きやすく、靴のことを意識せずに歩くことができました。「履いていないみたい」という感想は大袈裟ではありますが、そのくらい気持ちよく過ごせました。綿密な足の計測と、職人技術の賜物で、これからこの靴を成長させていくのが楽しみになりました。

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