東京の郷愁

コートがいらないくらい暖かい日が多くなり、いよいよ春の到来を実感する今日この頃、私はあいかわらず東京をぶらぶらしています。

東京都豊島区雑司が谷:猫

思えば中学生くらいから散策を続けていますが、四十を過ぎた今も新しい発見があって、東京という街は奥が深いなと思います。
いちばん好きな場所は住宅街や河川敷などごみごみしていないところなのですが、商店街や繁華街も面白いと思います。例えば、飲み屋の多い北千住や中野、赤羽、大塚。阿佐ヶ谷や吉祥寺、高円寺も久しぶりに行ってその良さを再発見しました。買い物をするのなら合羽橋や上野が面白いです。そのほか挙げるときりがないです。

東京都北区上十条:十条銀座商店街

散策と買い物を掛け合わせるのであれば、商店街を歩くのもいいなと思います。小岩や蒲田など活気のある商店街も良いですが、佐竹商店街や熊野前商店街のような少し寂れたところも大好きです。

東京都北区上十条:十条銀座商店街

先日は久しぶりに十条の十条銀座商店街に行きました。二百軒ほどお店があり、新鮮な食材を揃える八百屋や鮮魚店、美味しそうなおかずが並ぶ惣菜屋などが集まっています。古くから続くお店も多く、看板を見ると昭和の香りを漂わせていて懐かしい気持ちになります。

東京都北区上十条:十条銀座商店街

十条は商店街だけではなく、駅前のロータリー周辺も風情があります。ほのぼのとしていて穏やかな気持ちになれる素敵な場所だと思います。しかしながら、この周辺は再開発計画が持ち上がっていて、四十階建てのタワーマンションが建つそうです。

以前このコラムでも話題にした京成立石や、東急目黒線の武蔵小山もタワーマンションが建つ予定です。地元の人間ではないのでとやかく言う話ではないのですが、新しいだけで個性の乏しい風景に変わってしまうのは少し残念な気がします。高輪ゲートウェイ駅の開業によって姿を消す高輪橋架道橋や、豊洲移転による築地市場解体でも思いましたが、防災や交通、街のイメージの一新や経済効果などいろいろな理由はあるにせよ、建て替え以外の解決策というものはないものかと考えてしまいます。

東京都北区上十条:十条銀座商店街

過去に建てたマンションが老朽化し、建て替えようにもにもさまざまな事情があって建て替えられないというニュースを読んだことがありますが、タワーマンションの場合はどうなのでしょうか。いずれ時が経ったときにどのような問題が出てくるのか興味は尽きません。

東京都北区上十条:十条銀座商店街

「単にノスタルジーに浸っているだけでしょ」と言われれば確かにそうなのですが、変化が激しい東京だからこそ、郷愁という拠り所は必要だと思っています。新しい建物もいつかは古くなり、そこで育った人はタワーマンションであっても郷愁を感じるのでしょうが、過去の東京で育った私にはなかなか理解できません。今そこにある昔ながらの風景を目にし、写真に収め、少しでも記憶に留めておくようにするだけです。

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